夢4

□好き。大切。どっちもね
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「久保ちゃん」
 
 
 
 
 
リビングで新聞を読んでいる久保ちゃんの背に抱き着いて名前を呼ぶと久保ちゃんはどーしたのと新聞から目を話さずに言った。
 
 
 
 
 
「暇だよ。暇」
 
 
 
 
 
「そーね」
 
 
 
 
 
「いやいや、そーね。じゃないよ」
 
 
 
 
 
なに。どうしたいの、と聞かれ返答に困っているとガチャリとドアを開ける音。時任だ。それと共に久保ちゃんは私から離れ、時任に話しかけていた。
 
 
 
 
 
「久保ちゃ、ん……」
 
 
 
 
 
なぜだろう。声が上手く出せない。あぁ、出せないんじゃなくて出したくないんだ。今の久保ちゃんは楽しそう。多分私はあの中には入れないだろう。
 
 
 
 
 
私は、久保ちゃんが好きだ。愛してる。大切。けど、時任の事も好きだし、大切なんだ。久保ちゃんとは違う好きだけど、時任の悲しむところを見たくない。
 
 
 
 
 
「――沙耶ちゃん?」
 
 
 
 
 
久保ちゃんが、どしたの?と私の顔を覗き込んだ。瞬間、涙が出そうになった。けれど、頑張って笑顔を作って何でもないよ、と言った。
 
 
 
 
 

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