夢5

□好き≠すき?
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「――あ、えと、知夏ちゃん……いらっしゃい」
 
 
 
 
 
昼下がりの午後、涼しかった風も無くなり、やや不快感を感じる気温に早く涼しい所へ、とこの家まで来てしまった。がちゃり、という金属音と共に顔を覗かせたのは、この家の第二の猫――と言ってもいいだろう、紗夜が出迎えてくれた。知夏は、お邪魔しますと一声し、中に入っていった。
 
 
 
 
 
「あの、これ……」
 
 
 
 
 
知夏がソファーに座っていると、紗夜は見ているこっちがはらはらするほどコーヒーを注いだカップを慎重に持ってきた。
 
 
 
 
 
「わ、ありがとう」
 
 
 
 
 
そう言うと、紗夜ははにかんだように微笑み、知夏の隣に腰を降ろした。彼女曰く、時任と久保田は留守中で、家にいるのは紗夜だけらしい。
 
 
 
 
 
「ち、知夏、ちゃん」
 
 
 
 
 
「ん?――って、つけてくれてるんだ。そのピン」
 
 
 
 
 
知夏の目の先には、先日、紗夜に似合いそうだからとプレゼントしたピン。紗夜は、照れくさそうに、こくこくと頷いた。控え目な彼女の特徴を濁さず、それでいて彼女の魅力を引き立たせているそれを見て、知夏は買って良かったと頷いた。
 
 
 

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