夢6
□The affection to rain down.
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「真依ちゃ…!」
「あらあら…」
「ギューッ」
初めはあんなに警戒していたのに、今ではすっかり懐いている私の甥っ子五歳、名前はあつし。見事に懐かれ戸惑っているのは久保田くん宅のもう一人の同居人・紗夜。
「あっくん、紗夜お姉さんが困ってるから離れなさいって」
「や。」
「『や』って…」
あぁぐずる。珍しくぐずってしまってるあっくん。紗夜はあっくんへの扱い方が分からないのかあたふたしたまま。あっくんは座った紗夜の膝に乗ってむぎゅっと抱き付いたまま離れようとしない。よっぽど彼女が気に入ったらしい。
「…紗夜、あっくんね、紗夜のことが大好きになっちゃったみたいなの」
「『大好き』?」
「うん、大好き。ね、あっくん?」
「うん!」
苦笑を浮かべてそのままを伝えると、私のそれとは反対に紗夜の顔がほころんだ。あぁ眩しいエンジェルスマイル。あっくんに負けず劣らず可愛いく笑う。キュ
「ぼくもさやおねぇちゃんだいすき!」
それでもまだ少し戸惑いの残った紗夜の腕が、あっくんの背中に回る。紗夜は一度私を見た。だから大丈夫だよとアイコンタクト、笑って返した。そしたら今度は思い切りあっくんを抱きしめた。頬ずりなんかしちゃって、もう悶えてしまいそう。
そんな気持ちを抑えるように、且つ誤魔化すようにあっくんの頭を思い切り掻き撫でた。
「よかったねーあっくん」
「まいおねぇちゃんもすきだよ!」
「私も真依ちゃん大好き!」
「…っあーもう激カワコンビめ!」
二人纏めて私の腕の中に閉じこめた。二人は暴れながらキャーッと笑い声をあげて床に倒れこむ。そして思い切りくすぐりあった。
そんな、ある肌寒くなり始めた夏の終わりかけ、暖かくて幸せな一日の話。
The affection to rain down.
(おーなんかうまい具合にうちとけてんなぁ)
(可愛い光景だぁね)
(親父くさいよあんたたち)