小説
□日記ss1
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私という名の祈りを
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生きていく上で、いのちを奪う。
それは生まれてきた時から、きっと定められていたことだった。
シャワーが、赤く赤く染まった罪の証を洗い流していく。
「 っ」
くるしい。
いたい。
かなしい。
声に成らない叫びが、雫となって頬を伝う。
泣き方なんて、忘れていたのに。
目が赤く腫れない方法だけは、体が覚えていて。
「 ・・・かたさん」
ただ幼き日のようにその名に縋りつく。
「ひじかた・・・さん」
自分が奪ってきた生命の数だけ、いずれ自分も奪われるのだと、覚悟していたはずだった。
それなのに。
「ひじかたさん」
こんなふうにただ独り残されるだなんて、誰が想像し得ただろう。
『お前は生きろ、総悟』
『あいしてる』
愛情を語る詞が、呪いのように自分を生かす。
共に生きれないなら、その手で殺してほしかった。自分を生かした愛を、憎む時がいつか必ず来る。
けれど。
それまでは。
「・・・土方さん」
アンタが生かしたいのちを、祈りを捧げるよ。
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