小説

□傷愛
1ページ/9ページ


 全身の鈍い痛みに目が覚めた。
 身体のあちこちが痛くて重く、動くことさえしんどい。

 視界に入った手首は、血の滲んで無残に擦り切れた拘束の跡。

 ああ。

 何でこんなことになっちまったんだろう。

 あいつが居るだけで幸福感で満たされていたのに。

 これがあいつを愛した俺の罪なのか。
 奴を選べなかった俺への罰なのか。

 ぽたり。

 頬を伝う雫が、無意味にシーツへ吸い込まれていく。

 その跡を、無慈悲な手が拭った。

「悲しいの・・・?ねぇ、土方くん」

 普段は名字さえ呼ばないくせに、こんな酷く犯した後に平然と宣う相手を、本気で憎んだ。
 手のなかに刀が在れば、首を跳ねてやったものを。

「でも、お前も悪いんだよ。俺がお前を好きなの知ってて、沖田君に惚れた話なんて・・・許せるかよ。
 コレでもう、あの子の元には帰れないだろ?」


 俺に堕ちろよ。

 残酷な甘い声が、再び唇を支配した。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ