小説
□傷愛
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全身の鈍い痛みに目が覚めた。
身体のあちこちが痛くて重く、動くことさえしんどい。
視界に入った手首は、血の滲んで無残に擦り切れた拘束の跡。
ああ。
何でこんなことになっちまったんだろう。
あいつが居るだけで幸福感で満たされていたのに。
これがあいつを愛した俺の罪なのか。
奴を選べなかった俺への罰なのか。
ぽたり。
頬を伝う雫が、無意味にシーツへ吸い込まれていく。
その跡を、無慈悲な手が拭った。
「悲しいの・・・?ねぇ、土方くん」
普段は名字さえ呼ばないくせに、こんな酷く犯した後に平然と宣う相手を、本気で憎んだ。
手のなかに刀が在れば、首を跳ねてやったものを。
「でも、お前も悪いんだよ。俺がお前を好きなの知ってて、沖田君に惚れた話なんて・・・許せるかよ。
コレでもう、あの子の元には帰れないだろ?」
俺に堕ちろよ。
残酷な甘い声が、再び唇を支配した。
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