小説
□恋憐煉慕
1ページ/3ページ
恋憐煉慕
「何で別れた」
見回り途中でいきなり腕を掴まれて、そう問われた。
背後を振り返ると、銀髪の天パー男が立っている。
簡単に背後を取られる何ざ、俺はドコまで腑抜けているんだ。
気を捕られている原因に思い至って思わず顔を顰めた。
「質問に答えろよ」
「人の惚れた腫れたに口出しするとは、てめーはよっぽど暇なんだな」
不機嫌そうに腕を掴んだ手を弾く。
目の前の男の探るような視線が気色悪い。
「・・・・なんで、テメーの方が憔悴してんの?お前から沖田君をフッたんだろ」
その事実に胸が軋んだ音を立てる。
けれども、俺は平然と嘘をつく。
あいつに告げた言葉に比べれば、こんな痛みなど恐ろしく軽い。
「飽きたんだよ。あいつに」
嘲けるように、歪んだ笑みを形どる。
「もともと俺は姉のミツバが好きだった。そのミツバが死んで、どうしようもない劣情を、外見がそっくりな総悟に向けちまった。無理やり犯されたあいつは、俺を好きだと錯覚することで己を守り、俺はそんなあいつを利用していただけだ」
それはどうしようもない事実だ。けれど、俺たちの真実ではない。
俺はミツバが居たときから総悟を気に入っていたし、あいつも俺にずっと昔から惚れていた。ミツバと言う聖域がなくなった日、傷を舐めあうように互いを求めた。
「だから、飽きて、捨てた」
だから別れを告げた。
「じゃあ、何でそんなツラしてんだ」
それは、俺が、予想外に総悟のことを深く愛し過ぎてしまったからだ。
銀時の問いに、思わず笑いがこみ上げてくる。
「てめーには、一生わからねぇよ」
愛しているからこそ関係を終わらせねばならなかった、俺の気持ちなんぞ。