小説

□恋憐煉慕
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恋憐煉慕


「何で別れた」

 見回り途中でいきなり腕を掴まれて、そう問われた。
 背後を振り返ると、銀髪の天パー男が立っている。
 簡単に背後を取られる何ざ、俺はドコまで腑抜けているんだ。
 気を捕られている原因に思い至って思わず顔を顰めた。

「質問に答えろよ」

「人の惚れた腫れたに口出しするとは、てめーはよっぽど暇なんだな」

 不機嫌そうに腕を掴んだ手を弾く。
 目の前の男の探るような視線が気色悪い。

「・・・・なんで、テメーの方が憔悴してんの?お前から沖田君をフッたんだろ」

 その事実に胸が軋んだ音を立てる。
 けれども、俺は平然と嘘をつく。
 あいつに告げた言葉に比べれば、こんな痛みなど恐ろしく軽い。

「飽きたんだよ。あいつに」

 嘲けるように、歪んだ笑みを形どる。

「もともと俺は姉のミツバが好きだった。そのミツバが死んで、どうしようもない劣情を、外見がそっくりな総悟に向けちまった。無理やり犯されたあいつは、俺を好きだと錯覚することで己を守り、俺はそんなあいつを利用していただけだ」

 それはどうしようもない事実だ。けれど、俺たちの真実ではない。
 俺はミツバが居たときから総悟を気に入っていたし、あいつも俺にずっと昔から惚れていた。ミツバと言う聖域がなくなった日、傷を舐めあうように互いを求めた。

「だから、飽きて、捨てた」

 だから別れを告げた。

「じゃあ、何でそんなツラしてんだ」

 それは、俺が、予想外に総悟のことを深く愛し過ぎてしまったからだ。
 銀時の問いに、思わず笑いがこみ上げてくる。

「てめーには、一生わからねぇよ」

 愛しているからこそ関係を終わらせねばならなかった、俺の気持ちなんぞ。
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