小説
□恋憐連呼
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別れた次の日、あれだけ縋って引き止められなかったから、避けられるか無視されるかと恐れていたが、意外にも、以前と変わらぬ態度で接してきた。
朝寝坊して土方さんに怒られて一緒に昼飯食って見回りに出て。
けれど、性的な意味では、指一本触れてこない。
色を含む会話もない。
―――明確な拒絶。
夜。
いつものように―――別れ話なんか聞かなかったのように、土方さんの部屋を訪れた。意気込んで障子を開け放つ。そこにはいつもの黒い背中も、山積みの書類も、半分がおれの領地の万年床も見当たらない。
「・・・逃げやがったな」
おれの行動などお見通しってコトか。だが、コチラも伊達に腐れ縁やってたわけじゃない。
「オイ、山崎ィー!」
監察方の詰め所で、寝こけているパシリの頭を、踏む。
「ぶぎょ!?」
潰れた蛙のような素敵な音がした。
そのまま容赦なく体重をかけると、山崎は情けない悲鳴を上げた。
「止めて下さいよ〜、今日逃すと・・・まふぁた3日、眠れないんですぅ、からぁ・・・」
寝呆けているのか呂律が怪しい。この状況で起きないなんて、大したMっ気だ。
「あのヤローはどこでィ」
「副長ならー大広間ですー」