小説
□恋憐連呼
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近藤さんは普段は鈍いくせにこういった時だけ鋭い。
まさか土方と情を交していて、一方的に別れられたとも言えない。そんなことバレたら、おれを息子のように可愛がってくれている近藤さんは嘆き悲しんで――絶対怒って土方に斬り掛かっていく。
そして次の日エドニチに【衝撃!?真選組局長と副長、痴情のもつれで相討ち!!!知られざる衆道集団の実態】・・笑えねぇ冗談だ。
「なんにもありやせん。いつもの喧嘩でさぁ」
感情を交えず無表情に言えば、近藤さんは困った顔をした。
「・・・お前もトシも、性格は正反対の癖に、そういうところだけよく似ているからなぁ」
何のことか判らず、首を傾げて視線で問えば、そういう処がそっくりだとまた笑われる。
「お前等は二人とも、俺には何でもないような顔をするんだよ。その顔が既に何かあったっていう目印なんだが、そんなに俺に心配されたくないか」
ああ、なんて腑甲斐ないんだ。一番大切なこの人にそんな顔させるなんて。
何も言わないことこそが、優しい近藤さんを最も傷つけていた。
「・・・」
そっと、息を吸って。
「・・・『別れよう』って、いわれたんです」
近藤さんは何も言わず、じっと耳を傾けてくれていた。
「アイツは、昔から姉上のことが、好きだった。だから、姉上が居なくなってしまったあの日、代わりにおれを求めたんでさぁ」
あの日のことは、今でも鮮明に思い出せる。
獣のように理性をなくした土方に喰われた。悲しくても泣けないその男に、全てを投げ出して見せた。男がこれまでに触れてきた全ての者に嫉妬し、有ろう事か、ここまで苦しめた姉上に怨み迄抱いた。
「おれも、拒みませんでした・・・どうして拒めやす?ずっと、アイツと姉上が出会う前からずっと、好きだったのに!」
きっと、それは、出会った瞬間から。