小説

□ゆるり、
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「・・・」

 今まで一言も発しなかった総悟に、どんな言葉をかけていいのか迷う。

「大丈夫か」

 結局、どうしようもない平凡な台詞しかなかった。 答えはない。
 剥き出しになったままの肩に自分の上着をかけて、抱え上げようとするが、その手を弾かれた。

「なんで止めたんでさぁ」

「な、に・・・」

「おれは、別にどうでも良かったのに」

「なんだと?」

 感情を顕さない緋色の目に微かに見える苛立ち。
 それを確かめる前に、山崎が来た。相変わらず空気の読めない奴だ。

「おっ、沖田さんっ!!どーしたんですかっ!?」

「状況見りゃ明らかだろ。こいつら縄で縛って、処分決まるまで地下牢にでも放り込んどけ」

「分かりました。あの、局長には・・・」

「・・・言いたくないが、黙っててもいづれバレるだろ、近藤さんには。報告しとけ」

近藤さんの名前に、黙って聞いていた総悟が微かに体を震わせた。

「云わねぇでくだせェ、あの人には」

さっきまでの無表情が嘘のように俺に取りすがる。

「・・・出来ねぇな。お前が理由云わねぇと」

 しゃがんで顔を合わせると、怯えたように総悟が目を逸らす。

「言え―――なんで抵抗しなかった」

 顎を掴み、強引に目を合わす。

「ふっ、副長もっとお手柔らかに」

「こいつが優しくして吐くタマか。云わねぇなら、無理矢理吐かす」

 慌てる山崎を無視して総悟を担ぎ上げる。
 当然、総悟は抵抗するがそこは体格差で押さえる。

「ここを片付けろ。俺の部屋に誰も近付けるな。こいつにちょっかいかけようとしてる危ない隊士がいたらリストアップしとけ」

 一方的に言い捨て、歩きだす。耳元で騒ぐ総悟のせいで、山崎がなにか呟いたのを聞き逃した。

「アンタが一番危ない気がするんですケド・・・」
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