小説
□ゆるり、
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敷きっぱなしの万年床に総悟を放り投げる。
「っ!」
キレイに受け身を取って逃げ出そうとする身体を、上から押さえる。
「何で逃げンの。まださっきの答えてないだろ」
「答えたくねェからに決まってんでしょう。空気読めよクソ土方。コレだから鈍い奴とは気が合わねー」
いつもの悪態に若干ホッとするも、質問に答えないかぎり逃す気はない。
だが、この強情者が素直に白状するわけもない。
「バーカ、アーホ、間抜けー、ヘタレー、マヨラー星人、ウジムシ以下ー」
足をばたつかせながら、総悟が悪態をつく。
「うるせぇな。何でさっきはそうやって叫ばなかったんだ。こんだけうるさけりゃ、誰かが気付いただろうに」
「だって、アンタはおれを抱く気はないだろィ」
「?・・・抱かれたかったのか、誰かに」
意味が分からず尋ねると、あっさりと
「わかりやせん」
探るようにその顔を見つめるが、表情に嘘は見つからない。
「ただ・・・。時々、身体が苦しくなりましてねェ。ひとを、斬らなきゃ、収まらねぇんでさぁ」
ぎょっとした。
それは、人を斬りすぎた代償。このまま刀を振るい続け、押さえることが出来なくなれば、快楽殺人者に成り果てる。
そうやって壊れていく隊士を俺は何人も粛正してきた。
こいつがもし、そうなら――。
「いまも、か?」
「いや、アンタの顔見たら収まりやした」
その解答に息を吐く。今すぐどうにかなるわけじゃないらしい。
俺の心配を知らず、けど、あン時はヤバかったなァと頭を掻く総悟。
「奴らに殴られたとき、かなりキてましてねェ。差料抜いてたら、きっと殺してまさぁ。仲間ァ斬る位ならおとなしくしといたほーがマシ、ひょっとすりゃ抱かれて騒ぐ血も少しは収まるかなぁーと」
自分よりも相手の心配をするうちはまだ、狂いはしない。
まぁ、自分の貞操の危機なのに抵抗しないのは問題なので。
あっけらかんと語りだした蜂蜜頭に重たい拳骨一つくれてやる。
「―――ッてぇ、何すんでィ!」