小説
□サロメ
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サロメ
闇のなか、篝火が舞台を幻想的に浮かび上がらせる。
舞台の中心では、炎と戯れるようにひらひらと布を棚引かせながら、誰かが舞っていた。
火に照らされて、金に輝く髪。炎より強い光を宿す紅瞳。
総悟だ。
総悟は、見慣れぬ異国の衣裳を身に纏っていて、動くたびに飾りが美しい音を立てる。金の腕輪がはまった手に、丸いボールのようなものを掲げながら、裸足で踊っている。
妖しげに身をくねらせ。 露出度の高い深紅の布を肢体に絡ませ。
くるりくるり。
何処からともなく聞こえてくる曲に合わせて鮮やかなターン。
だんだんこっちに近づいてくる。
篝火の前に来たとき、音楽が止む。総悟はぴたりと足を止め、持っていたソレを自分の目の前に掲げた。
「!!!」
丸いソレは、人間の首だった。
首から下を無残に斬り捨てられていたが――見間違え様の無い。
俺の、。
虚ろに開いた瞳を、総悟が下から覗き込んでいる。
その衣裳も、手も足も、血に染まっていた。
「あーァ、土方さん。
これでアンタはおれのもの。おれだけのものになったんですねィ」
うっとり呟くその姿は、恐ろしい程官能的で。
「こんなおれを浅ましいと蔑みやすか嫌悪しやすか、土方さん・・・。
でももう、おれを拒むことさえ許しやせん。
アンタを永遠に手に入れた」
俺の首は応えないのに、何度も何度も口付けを繰り返す総悟。
その様が哀れで。
けれど、総悟の手に支えられた今の俺には、抱き締めてやる腕も、受けとめる身体もなくて―――