小説
□拍手3
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客の入りも疎らになってきた深夜に、その男は扉を開けて入ってきた。
別に、蹴破るわけでも抜き身の刀をぶら下げていたわけでもない。
ただ、いつもは身に纏う獣のような妖気が、なりを潜めていた。
だから、声を掛けられるまで気付かなかったのだ。
「よぅ、ヅラァァ。いい格好してんじゃねえか」
「っ高杉!貴様何でこんな処に居るっ!!!」
思わず叫んだ瞬間、客を案内していた西郷殿から叱咤されてしまう。
「ヅラ子!踊りの手が止まっているわよ!」
「くっ!!!」
「ありゃ、高杉じゃん。オマエ、何でこんなとこに居んの?」
配膳をしていた銀時も高杉を見て声を掛ける。
「テメェらの醜態を見物しに来たんだがなァ。思いの外、似合ってんじゃねぇか」
舞台の上の俺にも切れ長の隻眼が向けられる。
「刀ァ振り回すよりイイんじゃねぇか」
情欲の籠もった変態の視線に肌がザワリと泡立つ。
なんとか踊りを終えて足早に去ろうとするも、素早く手首を捉えられ、強引に隣に座らされた。
手際の良さに、向かいの銀時が口笛を吹いて囃す。
「――なァ、ヅラァア。昔の好だ。酌してくれや」
に、逃げねば確実にヤられる!!!
「わ、私には未だやるべきことが・・・!」
刺激しないようにそっと立ち上がりかけるが、高杉はがっしりと肩を押さえ込んできた。
「釣れねぇなァ。昔はよく二人だけで夜明けまで仲良く飲んでたじゃねぇか」
「ふーん。
‘二人だけ’で‘夜明けまで’‘仲良く’ねぇ〜」
含み顔でニマニマ笑う天パー頭を今すぐかち割ってやりたい。