小説
□拍手4
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手を伸ばす。
絡める。
落す。
先程から繰り返される、意味の無い一連の動作に、土方はとうとう無視するのを諦めた。
「・・・いい加減にしろ。俺は昨晩寝てねぇんだ」
日差しの温かい道場の縁側。
昼寝をしていた土方の隣で、長い黒髪を好き勝手に弄んでいる子供がひとり。
飽きずに髪に触れている割にさして楽しそうでもなく、子供らしからぬ無表情で土方を見つめていた。
「・・・あんた、毎朝変な匂いがする。夜、なにしてるんでィ」
その口調は咎めているわけではないものの、そっけない。
正直に女を抱いてきたと、幼い子供に言える訳もなく。
「・・・さぁな。大人のアソビだよ。
ガキはガキらしく、外出て遊べ」
言葉を濁した土方は、ぞんざいに手を振って子供を追い払おうとする。
「やましいことがあるから言えないんだろィ!」
再び掴もうとした小さな掌を、艶やかな黒は気紛れにすり抜け逃れる。
残ったのは感触と寂寥。
「添い寝で俺の髪を手遊むなんざ、10年早ぇよ、ガキ」
言われた言葉は、からかうようで、どこか艶めいていて。
理解できない幼い子供は苛立つ。
ぶちぶち。
「痛っ!」
髪の毛を思いっきり引っ張った。黒髪が小さな指に絡まったまま千切れる。
「てめぇ、何しやがる!!」
常より眼光鋭い土方の、青筋立った恐い顔にもめげず、沖田は尚も髪を掴む。
「いろぼけひじかたー!
さっさと髪の毛全部抜けて、ハゲちまえばいいんでさぁ!そしたら、誰も相手してくれないだろィ」
言葉は知っていても、行為やその意味を子供は理解できない。
夜は自分を置いて、何処か知らない場所へ行ってしまう土方に、沖田の精一杯の恨み言。