小説
□傷愛
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始まりはごく単純な事だった。
俺と銀時は、遇えば喧嘩するが結局似たもの同士で。
偶然入った飲み屋でばったり、なんて事はしょっちゅう在る。
顔を合わせてみれば相手が居るからといって、店を出るのは癪で。
結局互いに意地を張って飲み比べになり。
「・・・なぁ、誰か惚れた奴とか居ねぇの?」
なんでそういう話題になったかは覚えてない。
だが、男が集まってする話題といえば仕事の愚痴と女しかない。たから、何の衒いもなく答えたはずだ。
「いる」
奴は、驚いたような落胆したような、それでいて喜ぶような不思議な表情をした。
「どんな女?」
女と聞かれて穏やかな笑みを思い出すが、俺の想い人は同じ顔で不敵な笑みを浮かべる部下だった。
「女じゃねーよ、総悟だ」
吹聴しないと僅かでも信頼していたのか、たんに酒で口が弛んだだけか。
素直に答えた俺に奴はどんな顔をして笑った?
「へぇ――それは許せねぇな」
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