小説
□言の葉、ひらり(春)
3ページ/4ページ
短い髪を引き寄せられ、こめかみから柔らかな感触が伝わる。
「なっ、何するんでィ!この酔っ払い!」
一辺のためらいもなく頭突きをかましてやった。
「ーってぇな。なにすんだこのくそガキ」
「アンタが悪い!それにおれァガキじゃねぇ!!」
「そう言う奴がガキだってんだ」
「じゃあどうなったら大人なんでィ。いってみろクソ土方」
「なんでそう口がわりぃんだ。・・・。そうだな、デカく強くなって酒飲んで女を抱けるようになったら一人前だな」
「そしたら、ケッコンもできやすかィ?」
「そりゃまぁ・・・えっ?」
「近藤さんとケッコンするんでさぁ」
「いやいやいや、無理だから、ありえないから。
いったい、誰が結婚なんざ吹き込みやがったんだ」
慌てふためく珍しい土方を、ウザそうに見つめるおれ。
「近藤さんが通りすがりの女の人に土下座して頼んでやした。“一生幸せにします、自分と一緒にいてください”って。あれって、原田さんが言ってた、ぷ、ぷろぽーずっていうモンでしょう?おれは近藤さんを幸せにしてあげまさぁ」
おれが言い切ると、目眩がしたかのように土方は頭を押さえた。
「子供に何を教えてんだアイツらは・・・。
いいか、総悟」
「せーんーぱーい!」
「総悟センパイ。結婚っーのは“愛し合う”“男女”が“一緒にいる”ことを誓うモンだ」
「愛し合うって?」
「・・・互いを好きってこった」
「なら問題ありやせんぜ。おれと近藤さんは好きだし、おれ、女になりやす」
「そりゃ、お前はそこらの女よりか外身はいいがな。近藤さんをお稚児趣味の変態にするわけにゃいかねぇ。ただでさえ危ないのに」
「・・・よく分かりやせんけれど、近藤さんが困るなら諦めやす」
「そうか・・・」
肩を撫で下ろす土方だが、次の瞬間ひっくり返った。
「その代わり、姉上とケッコンしやす」
「えっ、ミツバ!?」
「!!!」
反動でおれまで投げ出されそうになる。あわてて奴はおれを引き込んだ。
「コワッ!」
「わりぃ。
あのな、結婚は親兄弟でもできねぇんだ。分かったか?」
.