小説

□言の葉、ひらり(春)
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 短い髪を引き寄せられ、こめかみから柔らかな感触が伝わる。

「なっ、何するんでィ!この酔っ払い!」

 一辺のためらいもなく頭突きをかましてやった。

「ーってぇな。なにすんだこのくそガキ」

「アンタが悪い!それにおれァガキじゃねぇ!!」

「そう言う奴がガキだってんだ」

「じゃあどうなったら大人なんでィ。いってみろクソ土方」

「なんでそう口がわりぃんだ。・・・。そうだな、デカく強くなって酒飲んで女を抱けるようになったら一人前だな」

「そしたら、ケッコンもできやすかィ?」

「そりゃまぁ・・・えっ?」

「近藤さんとケッコンするんでさぁ」

「いやいやいや、無理だから、ありえないから。
 いったい、誰が結婚なんざ吹き込みやがったんだ」

 慌てふためく珍しい土方を、ウザそうに見つめるおれ。

「近藤さんが通りすがりの女の人に土下座して頼んでやした。“一生幸せにします、自分と一緒にいてください”って。あれって、原田さんが言ってた、ぷ、ぷろぽーずっていうモンでしょう?おれは近藤さんを幸せにしてあげまさぁ」

 おれが言い切ると、目眩がしたかのように土方は頭を押さえた。

「子供に何を教えてんだアイツらは・・・。
 いいか、総悟」
「せーんーぱーい!」
「総悟センパイ。結婚っーのは“愛し合う”“男女”が“一緒にいる”ことを誓うモンだ」

「愛し合うって?」

「・・・互いを好きってこった」

「なら問題ありやせんぜ。おれと近藤さんは好きだし、おれ、女になりやす」

「そりゃ、お前はそこらの女よりか外身はいいがな。近藤さんをお稚児趣味の変態にするわけにゃいかねぇ。ただでさえ危ないのに」

「・・・よく分かりやせんけれど、近藤さんが困るなら諦めやす」

「そうか・・・」

 肩を撫で下ろす土方だが、次の瞬間ひっくり返った。

「その代わり、姉上とケッコンしやす」

「えっ、ミツバ!?」

「!!!」

 反動でおれまで投げ出されそうになる。あわてて奴はおれを引き込んだ。

「コワッ!」

「わりぃ。
あのな、結婚は親兄弟でもできねぇんだ。分かったか?」





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