小説
□言の葉、ひらり(春)
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よく分からなかったがとりあえず、空っぽの頭を働かせた。
結果。
「おれとケッコンしなせぇ土方!」
黒い着流しの首元をひっつかんで命じた。
「だから、どうしてそうなるんだ?!」
ギリギリと首を締め上げられ、青くなった土方が叫ぶ。
「あんたと姉上がケッコンするぐらいなら、おれがヤったほうがましでさぁ!ほら今スグケッコンしなせぇ!はーやーくー!」
「ぐぇえ!!!」
なんだかヤバい顔色の土方は段々力を失っていく。面白くなくなって手を離せば盛大に咳き込んだ。
「ふん、かいしょーのない男でぃ」
「げほっ、どんだけSなんだよお前。大体、結婚申し込む相手を絞め殺してどーすんだ」
「あいじょー表現でさぁ」
「えっ、何、結婚前からDV宣言?お前と結婚するようなドMはこの世に存在しねぇよ!」
「よかったですねィ、相性抜群で」
「いや、違うから。俺、MじゃねぇからむしろS・・・」
「アンタみたいな馬糞以下の変態男と一緒に居てくれる女なんざ、仏さんより慈悲深く博愛精神溢れる姉上しかいやせん。アンタに姉上を奪われるくらいなら、ミミズの千分のいちくらいアンタを好きになってやって、ゴキ取り専用機として使うため一緒に居てやりまさぁ。
一人じゃ寂しくて酒飲むしかないアンタのために」
本当に淋しかったのはおれの方かも知れなかったが、その時のおれは大威張りで命じたのだ。
「ケッコンしなせぇ土方」
おれの心を見抜いていたのか否か。
土方は確かにそういったのだ。
「ああ、お前が大人になったらな」
引き寄せられて、触れるだけの、淡い口付けを送られる。
それは未来に続く約束。
桜の木だけが二人を見ていた。
言の葉、ひらり舞い落ちた。
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