小説
□恋憐煉慕
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「・・・・・っくちょう、副長!!!」
大声で叫ばれて我に返る。
顔を上げると、目の前で呼んでいた山崎が、俺の机を指差した。
筆が止まったままの書きかけの書類には、大きなインクの池ができている。
「・・・コレはもう駄目だな」
諦めて、次の書類を探す。山崎に渡すべき書類は後5枚もある。
半分パシリと化している監察は、珍しい俺の失態に恐る恐る疑問を投げかけた。
「・・・・・副長。沖田さんと何かありましたか?」
「いや。どうしてそう思う」
「分かりますよ。最近の沖田さん、副長暗殺計画とか、仕事サボったりとか、ぜんぜんしてませんもん。あんなに大人しいの、俺が真選組に入って以来ですよ。それに副長も、煙草の本数が倍近くになって上の空ですし。前まで、時折副長の部屋に沖田さんが夜襲みたいなの吹っかけてそのまま朝まで居たり、休日も一緒に出 かけてたのにそれも無くなりましたよね。シフトも重ならないように組んでありましたし」
・・・優秀すぎる監察も考えものだ。まさか夜までバレていたとは。
思いもよらないことをいわれて俺が硬直した隙に、山崎はもう一歩踏み込む覚悟を決めてしまった。
「あの、その、・・・副長は、沖田さんのことが、すっ好きなんですよね?」
馬鹿がっ!!と叫んで殴ろうとしたが、人の顔色ちらちら伺いびくびくしながら尋ねる小心者ぶりに怒りが失せてしまう。
「あいつなんか、好きじゃねぇよ。俺が惚れてんのは、今でもミツバだ」
山崎が不可解そうに唸る。
「じゃあ、何で沖田さんと・・・。好きだからじゃ・・・・、愛しているからじゃないんですか?ミツバさんの身代わりだったってことですか?」
「あいつをミツバに重ねたことは一度もねーよ。むしろ、正反対だといっていい」
「俺には分かりません。ミツバさんを好きなのに、沖田さんを抱くのは、重ねるのと同じじゃないですか」