小説
□恋憐煉慕
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責めるように睨んでくるが、どうしようもないのだ。
「違う・・・ミツバは俺にとっての女神で、神聖で手に触れちゃならねぇものだった。惚れていたし、絶対に幸せになってもらいたかった。だから、真撰組を作るとき、ミツバを武州へ置いてきた。普通の女としての幸せを手にして欲しかったからな。俺にはできねぇことだった」
あのときのミツバの顔が未だに目に焼きついている。
俺の決心を、理解した上で受け止めてくれた。
『そーちゃんをお願いね』
美しいあの微笑みが、一生心を苛んでいる。
けれど。
「だが、総悟は・・・・道場時代から可愛げのねぇやつだったが、それでも弟のように思っていて・・・何ものにも変え難い位大切なはずなんだ。
それなのに・・・俺はあいつをココに連れてきちまった。あいつをミツバの元から引き離すことになろうが、その手が血に塗れようが、どうしても手放すことが出来なかった」
「それは・・・沖田さんを愛していたからでしょう?」
山崎の問いに俺は首を横に振る。
「・・・俺の醜い独占欲だ。あいつを、俺以外の奴に触れさせたくねぇ。俺以外の奴をあの眼で見られたくねぇ。ただそれだけで、抱いた。あいつが苦しむって分かってて止められなかった
こんなものは愛情じゃねぇだろ」
苦しげにはき捨てた俺を、山崎は哀れむように見ていた。
「其処まで想っているのに何故・・・・」
愛してる愛してる愛してる、だから手放した。
透明になった想いが誰にも伝えられずに消えていった。