封神
□未来予想図
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†冷やし中華始めました。
今日は株主総会で夜は遅くなりますから出前でも取っていて下さい。
ただ、そう伝えたかっただけなのに何でこんなことになるのだろう。
周囲では、三十分後に迫った会議に向けて激しく人が動いている。
「ジャス ○ックの為替はッ?」「今日の上場企業が…っ」「バーゼルシステムの構築云々」「 レアメタルの流動は」「欧州の金融政策の見通しに際して」「香港ドル売りが…」
周囲の喧騒も高性能なスマートフォンの向こうに届いているだろうに、殊更暢気な声が我が儘を言う。
『冷やし中華が食べたいのう』
コレが終わったら冷やし中華でも桃饅でも酔蟹でも何でも好きなものを作って差し上げますから。
本当に、今日は大事な日なんですって。
『胡瓜に甘めの刻み玉子、トマトにゴーヤ。紅しょうがとミョウガは少なめが良いのう』
……本当にホントに大事な日なんですよ
『黒酢に胡麻が掛かってあっさり風味な』
……虐めですか?最近忙しくて構ってあげられなかったから?
『お主の愛情が籠った、手作りがいい』
「………早めに帰りますから、煎餅でもかじって我慢してて下さい」
せめてもの抵抗に、返事も聴かずに切った。
「……お主も大変だな、楊ゼン総帥」
竜吉公主相談役の生温い視線が物凄く痛い。
「………貴女程ではありませんよ、公主。弟君の燃燈コンサルティングはどうしました?」
「彼方で元始天尊会長と打ち合わせをしている…今日の総会の見せ場はお主じゃからな。気張って参られよ」
「そうですね…行きましょう」
早く帰って、愛しの師叔に冷やし中華を作って差し上げなくては。