その他
□こーりんぐ
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こーりんぐ
「相談したいことが、ありまして」
部屋の影からいきなり現われた青年は、固まったままの二人の様子を完璧なまでに無視してそう切り出した。
切れ長の黒い双眸。闇を切り取ったような黒い長髪。顔の造作は美しいといっていいのに、凍えた陰気な表情のせいで悪魔のように見える。
ミラン=フロワード。
現ローランド帝国少将の地位にいる青年で、この国の闇を管理している男だ。
「・・・気配を消して人の背後に忍び寄るとは舐めた真似してくれるな」
いきなり現れたフロワードにも顔色一つ変えず、憎憎しげに嫌味を吐いた赤毛の青年。
名はクラウ=クロム。国王の右手で、ローランド帝国軍を統括する元帥、“紅指のクラウ”の異名を持つ。
「ふっ、フロワードさん!!ち、違うんですよ、これは、クラウ先輩が仕事をサボりたいからって無理やり・・・!!」
あたふたと机に積まれたカードを片付けようとするやさしげな顔立ちの青年。
名をカルネ=カウェル。国王の左手で、内政を取りまとめ、優しい表情とは裏腹に時に冷徹な判断も下す。
カルネとクラウの間には、カードと、チップの変わりに押し付け合われた重要書類の山。
二人ともこの国に無くてはならない重臣で、当然、莫大な仕事に忙殺されているはずなのだが・・・・・。
「あっ、てめぇ俺のせいにする気か?おまえだって『今度こそは日頃の恨み晴らさせていただきます!』とか言って、乗り気だったじゃねぇか!!」
「あっ、そういいますか。先輩だって、『書類なんて戦場じゃ糞の役にもたたねぇ!』とかいってサボってたじゃないですか!!だいたい・・・」
無駄な責任転嫁を続ける二人を見て、フロワードは不気味に微笑んだ。
「・・・陛下は、今日で、完徹五日目だそうですよ・・。あなたがたの様子を報告すれば、さぞかし、お褒めの言葉を下さるでしょうね・・・・・。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・と、ところで相談したいことって、な、なんだ」
「そ、そうですよ、フロワードさんが困るなんて余程のことなんですよね?」
一気に青ざめた二人の顔を見て、満足そうにフロワードは頷く。
「じつは・・・・陛下のことについてです。」
「シオンの?」
二人の顔が深刻になる。
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