その他
□茶州的一日
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秀麗と影月が、無事茶州府州牧となってはや数日。
毎朝恒例行事と化した光景があった。
州府の年寄り文官たちが好奇心半分呆れ半分に見守る中、年若い武官が花束を持って駈けていく。
「シ武官ッ、これを受け取ってくださいッ!!」
顔を赤らめた若者が捧げた先は、州牧執務室前に立っている美青年。
紅家家人にして専属武官、名をシ静蘭という。
静蘭は顔を引きつらせないよう自制しつつ、腕いっぱいの花束を受け取った。
「・・・有り難く、執務室に飾らせていただきます。毎朝、こんなに大量の花束をご苦労さま」
嫌味を込めていった言葉も、恋に浮かれた若者には通じない。
むしろ、表面上は笑顔のため逆効果だった。
「苦労だなんてとんでもない!シ武官のお顔を拝謁できるだけで感激ですッ!本当なら毎日お会いしたいのですが、浪州伊から“おまえら、執務室に人間バリケード作る気かよッ!?”と怒られてしまったので、同僚の分までお持ちしましたッ!」
酒、絹、飾り帯、菓子。
大量に積み上げられる貢ぎ物に、静蘭は頭を抱える。
「・・・茶州にも美しい女性はいらっしゃるでしょう。男の私に不毛な事をするより、そちらに送られては・・・」
「シ武官より美しい人間などこの世におりませんっ!」
きっぱりと言う武官とその同僚を殴り飛ばして説教してやりたい。静蘭の眉間に青筋がたつ。
「と、取り敢えず有難うゴザイマシタ」
頬を染める武官の気持ち悪さに耐えかねて、静蘭は執務室に逃げ込む。