その他

□愛
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愛 (willow様へアジマリ)

『お前は人形だ』


いかにも高慢なあの男の声が突然思い出された。
それは多分、白い空を見たからだ。
雪ではない。
ただの、曇り空。
それが灰色ではなく純白に今はなっていた。

『人形』

あいつの嫌な声が頭に響く。
人形人形人形、と。
何度も呪いの言葉の如く繰り返す声が腐って聞こえる。
「――――っ」
聞きたくないが、それでも頭の中で何度も何度も続けられていた。
「………ボクは」
人形なんかじゃない。あいつの操り人形でも無論、ない。
それなのに、エルデンにまで来ても忘れられないというのか。
思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「マリア……」
ボクは、そう。
マリアに。
愛しいマリアに会いに来たんだ。それなのに、会う前にこれでどうする。
「マリア……!」
「何」
「へ?」
頭の上から突然マリアの美しい声がした。ああ、マリア。キミは例え幻覚だとしてもボクを助けてくれるんだネ……。
「何してんの、こんなとこで」
もう一度マリアの声が降って来た。
やけにリアルな、マリアの声が。
「……ン?マリア!?」
「だから、何」
慌てて顔を上げると、そこには愛しいマリアの顔が……!
「マリア!」
「しつこい!」
「あ痛ッ」
平手打ちを食らった頭がじんじんと痛む。愛の名残、というやつだネ。


―――ああ、マリア。キミは女神だ。
あんな奴は関係ない。ボクは人形じゃない。キミを愛する、一個人だ。
ボクはキミへの愛に一生を捧げ、人形なんて関係なくキミを愛す。
ああ、キミは天使でもある!
悩むボクを愛の力で救ってくれたのだから―――!


「……で、何してんの、こんなとこで」
「フッ。キミへの溢れんばかりの愛に悩んでいただけサ。
心配してくれたのかい?」
「な…!心配なんてするわけないだろ!ただちょっと様子が変だったから……。ホントは素通りしようとしたんだよ!」
「フフッ。照れなくてもいいんだヨ」
「照れてない!」
そうは言っても微かに顔が赤いマリアが愛しい。
ああ、マリアマリアマリア―――!
「ッ!?」
体が勝手に、とはこういうのを言うのかもしれない。
勝手にマリアを抱き寄せていた。
「な、何するんだよこの変態っ!」
もがくマリアを無理矢理抑えてぎゅっ、と強く抱きしめる。
「ちょっと、アジアン………!痛いってば!」
流石に強く抱きしめ過ぎたらしい。
しかし、それでも放したくはなかった。
「マリア……」
「アジアン…?」
暫くは、このままで。
声にはならなかったけれど、伝わったということを信じて。
この愛を、人形ではないことを、確かめたかった。


確かにこれは、
キミを想う気持ちは、偽りなどない。
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