突発連載
□P.S
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――上からドスドスと、巨大なアイマスクが音を立てて墜ちてくる。
「っぐぁ…ぅう"〜ん、う"〜ん」
何処か覚えのある、他人を小馬鹿にしたような目玉付きのその物体は容赦なく俺へと降りかかる。
「ぐっ!」
押し潰された俺は窒息死しそうになりながら必死に藻掻く。
手当たり次第にアイマスクを押し退け、隙間からどうにか顔だけ出すと。
眩い光の中、すぐそこにに誰かが立っていた。
ふわりと、百合のような香が鼻先を掠める。
懐かしい笑い声が耳朶を打った。
「幸せの重みよ、十四郎さん」
「っ!?」
顔を上げる前に、目が醒めた。
見慣れたヤニ臭い天井。夢から覚めた筈なのに、躯は驚くほど重――…
「あんな夢視るはずだ」
下げた視線の先には、己の腹部に乗っかる蜂蜜色の毛むくじゃら…気持ちよさそうに涎まで垂らした総悟が在る。
我に帰れば何のことはない、お互い生まれたままの姿で身体を貪り尽くした後、気絶するように眠ったらしい。
汗で貼り付いた目の前の前髪を払ってやる。
「幸せの重み、か…」
恨んでいると思っていた。
総悟も近藤さんも取り上げ、恋情も断ち切った。
やっとで掴んだ幸せも、この手で壊した。
優しい言葉一つ掛けてやれなかった。
何一つあの愛情に報いてやれなかった。
けれど、そんな悔いや後悔も軽やかにわらってあの女は、
そーちゃんをよろしくね