封神

□波紋
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ガタン。


会議室に椅子が倒れる音が響き渡る。

会議に飽きた面々が音源に顔を向けると、卓上に両腕を突いた太乙の姿があった。

下を向いているせいで、黒髪に隠された表情は見えない。

「た、太乙?」

不穏な雰囲気に目が覚めた道徳が、恐る恐る声を掛ける。

「ぎょ…っ」

「「「ぎょ?」」」

「玉鼎師兄の浮気者ーっ!!」

「「「はぁあ!?」」」

卓を蹴りつけるようにして駆け出した太乙に呆気にとられる十二仙の面々。

いち早く立ち直った玉鼎が、直前まで太乙と話していたであろう道行に尋ねる。

「道行…、何を話していた?」

元より強い眼光で低く問われれば、もはや恫喝に近い。

道行は道徳の影に隠れるようにして震えながら答えた。

「ふっ、普通に昔話でしゅ」

「只の昔話で太乙が動揺するわけあるまい」

「ほっ、ホントでしゅっ!昔、燃燈と玉鼎が喧嘩していたときのことを話して…」

「あっ、アレか、公主と玉鼎がくっついて燃燈が荒れ狂ってた…」

思い出した黄竜がぽんっと拳を叩くと、道徳が軽蔑するような眼差しで玉鼎を見た。

「それば浮気者と言われても仕方ないじゃないか。仙界一の美女と恋仲で有りながら太乙にも粉掛けている訳だろ?」

「戯れ言を!公主は善き友人、そのような浮わついた仲ではない!私の妻は太乙だけだっ!!」

弾かれた様に走り出す玉鼎。置いていかれた十二仙の間に鉛よりも重い沈黙が舞い降りる。

「妻って………」

「浮わついた仲って…可哀想な公主」

公主の想いは火を見るより明らかだったにも、関わらず全く気づく気配のない玉鼎に頭を抱える者。

玉鼎と太乙がいつの間にか深い仲に成って居たことに衝撃を受ける者。

面白半分に玉鼎の後を追いかける者。

全てに無関心で居眠りする者。


会議はすでに崩壊していた。
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