突発連載
□P.S
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夢は抑圧された願望だという。
もしその通りなら、俺はどれだけ利己的なんだ。
けれど、夢はあまりにも優しく。
「…ひじかたさん」
濡れた睫が震え、斜陽に似た紅が俺を捕らえる。
「起きたか…」
愛しさと痛みが綯い交ぜになって、まだ柔らかさを残す頬へそっと触れた。
「…姉上の夢を見やした」
息が詰まる。
触れた指先が罪悪で、僅かに離れる。
「辛いか…?」
「いいえ…
祝福してくれたんです、お幸せにって…笑って…っ!」
姉に瓜二つの顔をクシャクシャに歪めて総悟はなく。
「何一つしてやれませんでした…っ姉上はおれのために全て諦めてくれたのに…幸せにすることも、傍に居てやることさえ出来なかったんだっ、それなのにーッ!」
慟哭の一つ一つが刃となり俺へと突き刺さる。
けれども、赦しより痛みの方がずっと容易い。
あの微笑みを忘れるより、ずっと。
「お前の所為じゃねェ、俺が…」
血が滴るまで握り締められた手を掴み総悟を抱き寄せようとする。
「そうじゃねぇんです!!」
総悟は俺の手を振り払い、逆に俺の頭へ腕を伸ばして抱きしめてきた。
力一杯に押し当てられた薄い胸板から、鼓動と泣き笑いの声が聴こえる。
「…"私の分まで生きて。絶対にその手を離さないで"」
…約束する。
言葉の代わりに総悟の身体を強く抱きしめ返せば、ミツバの笑みが朝日に溶けていった気がした。