突発連載
□罪人縋りし蜘蛛の糸
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倒れたままの身体を起こそうと伸ばした手は、本人に叩き落とされた。
「さわんな」
いつも気丈な声が、奇妙に上擦っている。
「どうしたんだ?まだおかしいのか?」
精神的なショックを心配して覗き込めば、獰猛に輝く紅い眼。
思わず引き込まれそうな強い感情。
「近づかないでくだせぇ・・・血が、治まらねェんでさァ、殺っちまうかも」
身の内の戦闘本能に抗うように、細い肩は震えていた。
「・・・もう少し打ち合うか?」
「無理。正気に返ったのに、アンタがおれに勝てるはずない。死にやすぜ」
好戦的な気配が喉をぐるぐる鳴らす。
口調はいつもの生意気さを止めていたが、表情は苦渋を押し込めた、笑顔。
「娼館にでもいって、発散させろ」
「・・・あんなの、抱き殺しちまいそうなんで。いっそ近藤さんに見つからないところへ、縄で縛って放置してくだせぇ」
プライドが高く人に弱みを見せない総悟が、一番嫌っている俺に頼る。
それだけで、どれほど切羽詰っているかが理解できた。
まだ15の総悟は、この初めての高揚を、暗い欲望と殺気を、どう処理していいか分からないのだ。
だが俺は、狂おしい熱から救う方法をただ一つしか知らない。
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