突発連載
□罪人縋りし蜘蛛の糸
29ページ/47ページ
『ごめんね、そーちゃん。ごめんね・・・』
おれのなかで、最も古い記憶。
姉上がおれを抱き抱えて泣いている。
おれはただ意味もわからず、灰になった母親を見つめていた。
父は攘夷戦争にて行方不明。
元々身体が丈夫でなかった母も、おれたち姉弟を残して逝った。
おれが5才の頃だ。
『おねーちゃんが守るから、大丈夫だから』
自らに言い聞かせるように、おれを抱いた腕は細く果敢無く。
大切な家族を、これ以上何物にも傷つけさせないと、幼心に誓ったのだ。
場面が切り替わる。
『お前が沖田総悟か?』
父の知り合いだというその人は、子供の俺にはひどく大きく恐く見えた。だが、
『よく来たなぁ〜総悟っ!』
向日葵のように温かで、裏表ない笑みをすぐに好きになった。
大切な守るべきものが、二つになった。
『俺ァ、言葉で語ったり考えたりするのがどうにも苦手でなぁ。相手を見るなら剣をみる。剣は嘘を付けねぇ。戦っているときが一番相手を理解できるんだ』
愚直なまでに直向きな剣。
『刀の重みは、己の守りたいモンの重さだ』
だから強くなろうと頑張った。
場面が切り替わる。
『お前はミツバと残れ。
足手纏いだ』
『頼む。お前の剣は、人を斬るための剣じゃない』
いやだ。
なんの為におれは強くなったんだ。
『十四郎さんをよろしくね、そーちゃん』
場面が切り替わる。
『俺を嫌え。俺を憎め。
全部の罪を引き受けてやる』
アンタは――狡い。
愛しさも憎しみも絡まり合って解けない。いっそ嫌ってしまえたら、どれほど楽か。
感情が渦巻いて深遠へと落ちていく・・・。
.