突発連載

□罪人縋りし蜘蛛の糸
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 武州から流れ込んだ風が、木の葉を散らして吹き荒れる。

 見慣れた綺麗な字の羅列が掌から翻り、畳へと舞落ちる。

 はらり。

 動揺を嘲笑うように、小さな葉書は二文字をおれに見せ付けて鎮座していた。

「姉上・・・・・・」





 ギラギラと目を血走らせて診断結果を聞く土方に、山崎は嘆息した。

 なるべく離れていよう。
 相手は傷を負った獣同様。
 下手に近づくと何されるか分かったもんじゃない。

「肋骨二本にヒビ、肩と脇に裂傷、下腹部の刺し傷は小腸まで届いてましたし、ご自分で刺された脚の傷も開いてますねッ!
 ――絶対安静で一ヵ月、リハビリ三ヶ月ってとこですね」

 一気に告げると案の定、即座に反論が帰ってくる。

「ざけんな!ンなモン二週間だ、二週間ッ!マヨ食ってりゃすぐ治る」

「ハイハイ、頭のほーは永久に治療は無理っぽいですね」

 これでも細心の注意を払って口の堅い医者を呼んで治療したのに。
 労り甲斐のない上司に泣きたくなる。

「馬鹿にしてんのか?」

「馬鹿でしょ実際。
 脚も治ってないくせに単身敵陣に突っ込んで!」

 寝かされている土方の脚を山崎のミントンが、離れた位置から容赦なく叩く。

「一人で格好つけて沖田さんに刺されて!少しは警戒しろっての!隊長がアンタに素直に抱きついたりするかッ!あの高杉がなんもなしに人質解放するかッ!」

 相手は怪我人。動けないと見て山崎は日頃言えない不満をぶちまけた。

「アンタが沖田さんに甘いのは全隊士了承してますよ!?でも、家族に対する親愛と恋情はき違えて混乱させるのは止めてくれません?今回だって、薬と武器のレート調べるために江戸を空にして、あとは全力で沖田さんを取り返すだけだったのに、わざわざ高杉の挑発に迄乗っちゃって・・・」

「分かってる。もうあいつに手を出すような真似は決してしない」

 真面目に頷く土方に、山崎は天を仰いだ。

 ジーザス、誰かこの単細胞の石頭をかち割っちゃってください!

「分かってねーッ!!!アンタの脳みそどーなってんの!?鈍感星の激ニブ王!?
 俺たちが言いたいのは、早く腹を括って隊長と付き合えって事です!!」

「ハァ!?出来るわけねーだろンなこと!俺は副長、あいつは隊長だぞ!?大体あいつは俺のこと憎むべき相手としてしか見てねーよ!戻った時のあいつの態度、知ってんだろ!」

「アンタが無理して一人で受け止めたのが悪いッ!いくら沖田さんだって、血塗れて気絶した副長みたら罪悪感湧いてまともに目ぇ合わせられませんよ!」

「罪悪感んん!?
“ケッ、くたばってりゃよかったのに・・・”だぞ!その後近藤さんに泣き付いて離れなかったじゃねーか!」

「愛情の裏返しです!」

「わかるかボケ!」



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