突発連載
□罪人縋りし蜘蛛の糸
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ピチチチチッ。
小鳥の囀りで目が覚める。
低血圧のおれにしては、珍しいくらい快適な目覚めだ。
見上げた先には、染みの数まで覚えているおれの部屋の天井。
「起きたか」
声を掛けられてから、其処に黒い着流しの男が鎮座しているのに気が付いた。
気配に敏感なおれにしては、こんなに接近を許して寝ているなんて珍しい。
いつからいたのか。全く気づかなかった。
それにしても、朝ぐらい爽やかな顔をしていてもいいだろうに、眉間に縦皴が寄っている。
「おはようごぜいやす、土方さん」
取敢えず挨拶をしてみると、少しだけ表情が和らいだ、気がした。
「気分は如何だ」
「上々でさァ」
「そうか」
それだけいうと、土方は障子を開けて出て行こうとする。
変だ。この上なく変だ。
自分も土方も、皮肉一つ言わず、自然に傍にいたなんて不自然極まりない。
「ひじかたさん・・・?」
「・・1時間後に会議が始まる。それまでに朝食摂っとけよ」
振り返らずに障子を閉めるその手首に、白い包帯がチラリと見えた。
自分の手首を見てみると、右手だけ同じように包帯が巻かれている。
刃物で切ったのとは違う、擦れたような痛みを意識して、昨晩あったことを思い出す。
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