突発連載
□幕間
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「・・・なんだテメーは」
わけが分からぬまま川を泳ぎ、濡れた着物で引きずり込まれたぼろ屋敷。
怪しい連中が(廃刀令が出されているにもかかわらず)刀を振り回しながら騒いでいる庭先。
悪の親玉のように黒い着物の男の前に引き出されて、山崎は恐怖と寒さに震えていた。
「あの、・・・その・・」
(此処はもしや、最近起きてる攘夷テロの、隠れ家なんでしょうか・・・?俺、殺される?)
小心者の山崎にはっきり尋ねられるはずもなく。
挙動不審にしていると怒鳴られた。
「だからなんだってンだ!」
「ヒィィィ!ごめんなさいっ!!」
顔立ちははっとするほど良いのに、目付きがとてつもなく悪い男にギロリと睨まれて、山崎は何も悪くないのに反射的に謝ってしまう。
濡れたままガチガチと震える山崎の肩を、此処に連れ込んだ張本人が力いっぱい叩いた。
「まあそんなに怯えなくて大丈夫だ!トシの目付きが悪いのは生まれつきだからな!ホントは優しくて良い奴なんだぞっ!!ぶえくしょん!!!」
褌一丁でくしゃみをして笑う男を、トシと呼ばれた目付きの悪い男が呆れたように言い返す。
「何のフォローだ・・人の良さならあんた以上に馬鹿な奴はいねぇよ。大体、何で二人とも濡れてんだ?水遊びには早いぞ」
「遊んでいたわけじゃない!此方のジミーさん(仮名)が自殺しかけていたから説得していたんだ!!」
「何ですかそのネーミング!?俺は山崎ですから!つか、自殺してないし!!」
「うむ我ながら的確な名前だと思うぞ!一発でアンタだと分かるしな!」
「酷っ!!」
「変な奴拾ってくんなって言っただろ、近藤さん。攘夷派のスパイだったらどーするつもりだ」
えっ?此処がその攘夷派じゃないんですか、と山崎が問いかけるより先に、背後のゴリラのような褌男から肩を抱かれる。
何の気負いもなく回された大きく頑丈な腕は、人を傷つけたりするより信頼する仲間を守ろうとするような温かなもの。
「山崎さんはそんな人じゃない!目を見れば分かる!」
なぜそんなに確信を持って言えるのだろう。
阿呆らしい、馬鹿げてると思いながら山崎はその手を振り払うことができなかった。
「アンタの眼は信用できねぇよ。原田みてぇなヤクザ上がりに、鴨のようないけ好かないインテリ、それに俺まで受け入れちまうんだから」
厳しいことを言いながら目つきの悪い男が口の端を緩める。たったそれだけなのに、男の雰囲気がぐっとやわらかくなって、山崎はやっと力を抜いた。
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