その他
□Geometry lover1
2ページ/3ページ
端整な顔でじっと見つめられると、何もしていないのに悪いことをしたような気になる。
「うーん、起こされたときはイヤだったけど、起きた今は感謝してるかな?」
「そうか」
ロイディが何だかホッとしたように見えて、つい笑ってしまう。
そんな機能ついているはずがないんだけど。
「何故笑う?」
生真面目なロイディ。そんなパートナーを僕はついからかってしまう。
「ロイディが好きだからだよ」
「私が好きだとミチルは笑うのか?」
「凄く好きだと思ったときだけね」
そういって、僕はベットの脇に立っているロイディに抱きついた。
ロイディは窓を開け放っていて、ベットから離れると少し肌寒い。
肩を震わせた僕を見て、ロイディは背中に腕をまわして抱き込んでくれた。
「ミチル、服を着なさい。風邪をひく」
「大丈夫・・・・あったかいね、ロイディ」
「私に表面放熱システムは付いていない。ミチルより冷たいから風邪をひいてしまう」
「でも、あったかいんだ・・・心が」
「心?」
「そう」
「ミチル、ウォーカロンに心はない」
「ううん、あるよ。僕が命令してないのに起こしてくれたり、コーヒーを用意してくれたり、僕のことを心配してくれたりね」
「それは、日常の頻度と記録データから導き出された憶測であって、心ではない。
ウォーカロンはヒトのために作られた。だから主であるミチルの為に働く。私の行動原理は心を軸としていない」
「じゃあ、今抱き返してくれているのも、僕のためなの?」
ロイディは僕を抱きしめたまま押し黙る。
自分の行動に明確な論理が見つけ出せないのだろう。
「すまない」
そういって離れようとするロイディを僕は手を掴んで引き止めた。
「なんで?僕は凄く嬉しいよ、ロイディがこうしてくれること。
本当は我侭な話なんだろうけれど」
「ミチル、話より先に服を着て」
「はいはい」
ロイディが手渡してくれた服を羽織る。