花の栞

□一番星と雪と願い
1ページ/36ページ

☆☆☆
頬を撫でる空気が鋭く冷たい。
ひゅううっと吹き抜ける風の針に刺されて、少年達はぶるるっと身震いする。
昼間の内は白い雲に覆われているのにきらきらと煌めいていた空模様は、強い風に押し流された雲に切れ間が出来て、その向こうに朱色のグラデーション…夕焼けの空がのぞいている。

とある山奥の村。そこでこの時期に毎年開かれるという『雪待ち祭り』。
小規模ながらも歴史あるお祭りで、遠方からの観光客も多数訪れるお祭りだそうだ。
村の中心の広場には山の神を祭る祭壇が設けられ、そこで飛び入り参加可の奉納ポケモン試合(バトル)が開かれるとあって、麓のポケモンセンターでジョーイさんから話を聞いたサトシ達は一路、山奥の村を目指して歩いているのだった。
「エ−イパムッ、エイエィ♪」
山に入る時にモンスターボールから飛び出して来たサトシのエイパムは、そろそろ見頃も終りに近い紅葉樹の木の枝にぶらさがり揺らして飛び移り…を繰り返し、サトシ達の少し先を進んで行く。その度に枝から朱色や黄色の秋の名残達がはらはらと舞落ち、夕日を受ける一片(ひとひら)一片が陰影を作る様は何とも美しく面白い。エイパムは樹上から、彼女の大好きなパートナーの少年が楽しそうにその風景を眺めているのを見てご満悦だった。はしゃいでいるかのように楽しげで軽快な連続ジャンプはしかし、そこで突然途切れてしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ