花の栞

□君と歩む「道」
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 よじ登らなければならない高さの段差に向かったリラが気を引き締めると、先を行く人物が右手を差し出した。
「ほら。」
 つかまることを促す逆光の笑顔。優しさに触れて胸に溢れだしたときめきのせいで、リラにはその表情が尚更輝いて見える。
 自分に向けて差し出された手。リラはこれまでも自然に触れて過ごすことが多く、女の子にしては活発な方だった。だからこの位の段差なら

ひとりでも、越えられるよ。
でも…。
「…うん。」
 一瞬躊躇いはしたが、リラは素直にその手に自身の右手を預け、更に左の手を添えてしっかりとつかむと、思い切り地面を蹴りあげた。

 岩の段差を乗り越えた先には、とても見晴らしの良い、爽快な風景が広がっていた。透き通る、心に染み入るような空の青。そして緑の山々を見下ろしながら感じる風の歌声が、胸のなかにも響いてくる。
「あのさ、ちょっと離してくれないか。」
「!あっ、ごめん。」
 苦笑しつつの催促に少女は慌てて手を離した。どの位の間、彼の腕をつかんだままでいたのだろうか。
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