花の栞

□一番星と雪と願い
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「ぅん?どうしたー?エイパム。」
長い尾を器用に枝に巻き付けて逆さにぶら下がり、行く先と自分とを頭ごと動かして交互に見ているエイパムにサトシは声をかけた。エイパムは、ちょっと困ったような顔をしている。
左に大きく膨らむ弧を描く山道の茂みに遮られて、サトシ達の位置からは見えない場所に何かがあるのかもしれない。
「あ、あれぇ??」
「道がないな。」
弧を曲がった少年達の目に飛び込んで来たのは寝そべった木だった。
たいそう立派な木の倒木で道がすっかり塞がれているのだ。
高い木の枝と枝をジャンプして進んでいるエイパムだけなら難なく先へ行かれるだろうが、サトシ達にこの倒木をあっさり容易に乗り越えるのは無理だろう。そう判断したエイパムはサトシ達が道を選ぶのを待っているのだ。
「よじ登れば、よじ登れない高さでもないが…。」
枯れたツタの蔓が絡まる、横たわる木の幹に触れてタケシが言いかける。立派な木だけど、無限に空までのびていたわけではないだろう。木の輪郭に沿って歩けば、そんなに時間をとることなくこの先に続くだろう村への道へと戻れるだろう。
とりあえず右と左、どちらの方へ進もうか?とタケシが決をとろうと口を開きかけた時、
「おや。旅の方かね?」
がさりと低木の葉を掻き分けて、顎髭を蓄えた一人の老人が現れた。
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