*retsu-go*

□この感情の意味を、
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何事かと思い、視線を下へずらせば、チームの紅一点であるローザが、幾分顔を赤くして緩んだ笑みを浮かべていた。

「……どうしたんです、一体?」

えへへ〜と上機嫌に笑いながら抱き着いてくるローザから視線を目の前の友人へと戻し、尋ねれば。
返ってきたのは、「酒盛りをしていたら、こうなったんだ」という苦笑混じりの答え。
おまけに、お前たちの部屋に遊びに行くって聞かないんだとまで言われてしまい。
エーリッヒが深い溜息を零していると、その背中に様子を窺いにやってきたシュミットの声がかかる。

かくかくしかじかで、と状況を伝えれば、シュミットは仲間を得たと言わんばかりの表情でアドルフたちを中へ招き。
用意していたワイングラスは、あっという間に2個から4個へと増やされてしまう。
その様子を黙って見ていたエーリッヒは今度こそ頭を抱えると、明日の予定はキャンセルだな、と独り呟くしかなかった。


だが、こうして始まった祝勝会という名の酒盛りは、開始から1時間も経つ頃には見るも無残な状態と化していた―――…。


「シュミット、大丈夫ですか?」
「…駄目だ…気持ち、悪ぃ…」
「ペースも考えず、あんなに飲むからですよ」

ベッドの上で酔い潰れている親友を見下ろし、エーリッヒは小さく溜息を吐く。

快調にグラスを空けていたのは最初の方だけだった。
二本目のワインを開ける頃には、酔いの回った身体を睡魔が襲い始め。
過去の教訓と、すぐさま眠ってしまったローザの世話のため、早々に切り上げていたエーリッヒは難を逃れたものの…。
まだ大丈夫だからと、最後までアルコールを煽っていたシュミットは現在、気持ち悪さも祟って、ベッドから起き上がれないという状況に陥っていた。

「それじゃあアドルフを部屋まで運んでくるが、…手伝わなくて本当に良いのか?」

同室者でもある少年の肩を支えると、ヘスラーは入口で脚を止め、後ろを振り返った。
視線の先には、シュミットからローザの元へ移動し、一向に目を覚ます気配のない相手にがっくりと肩を落としているエーリッヒの姿がある。
その背中にもう一度同じ台詞を投げかけると、困ったように微笑んだ相手が、やはり困ったように口を開いた。

「いえ。抱き抱えていくわけにもいかないですし、起こすのは諦めて、今日はココで休んで貰おうかと…。なのでコッチは大丈夫ですから、気をつけて部屋まで帰って下さいね?」

それへ、小さく頷き返し。
最後に就寝の挨拶をするとヘスラーはドアの向こうへとその姿を消した。

パタン、とドアが閉まると、少し前までの喧騒が嘘のように静まり返る。
だがそれを振り切るように、すっくと立ち上がったエーリッヒの耳に、刹那低く唸るような声が届く。
そちらへ視線を移せば、うっすらと瞼を開けたローザが口許に手の甲をあてているところだった。

「大丈夫ですか?」

そう、気遣うように尋ねると、水…と幾分掠れた返事が返ってくる。
エーリッヒは室内に備え付けられた簡易冷蔵庫へと向かい、中からミネラルウォーターを二本取り出してきて。
何とか上体だけ起こした相手の背を支えてあげながら、もう一方の手は誤って取り落とさぬよう、ペットボトルを持つ手に添えさせる。
ゆっくりとだが、しっかりとした様子で水を取る姿にホッとし、再び横になったローザへ、後はぐっすり休んで下さいと囁いた。
そうして、額にかかった黒髪を払ってやりながら寝顔を眺めていると、

「好きなのか?」

不意に、聞き知った声が耳に入る。
エーリッヒは慌てて振り返ると、言葉を詰まらせながら、そんなことを言った友人に首を思いっきり振ってみせた。

「ち、違いますよ…!別に、そんなんじゃ…」
「そんな真っ赤な顔で言われてもな」

ギシッ、とスプリングを軋ませ、起き上がると。
シュミットは機嫌の悪さを隠そうともせず、苛立たしい光を乗せた瞳で親友の顔をジ…ッと見つめた。

「そいつには黙っておいてやるから、早くやってしまえ。」
「だから違いますってば!」
「意気地のない奴だな。それとも、」

そこで一度口を閉ざすと、エーリッヒの腕をぐいっと引き寄せ。
わ、わ…、と小さく悲鳴を上げた相手を今まで自分が休んでいたベッドに押し倒した。

「初めてで判らない、か?」
「…ッ!!」
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