*retsu-go*

□この感情の意味を、
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途端、図星だといわんばかりに頬を上気させたエーリッヒに、シュミットはフッと口許を綻ばせる。
そうして楽しそうな、それでいてドコか意地の悪い笑みを浮かべると、親友の顔を真上から見下ろし、静かに口を開いた。

「…だったら、俺が教えてやろうか」

という囁きを乗せて――。


「ちょ、ちょっと…シュミット!冗談なら、また今度に……」
「冗談でこんなことができるか」
「ッ…!?」

必死に背けていた顔を、ぐいっと顎を掴まれたことで元の位置に引き戻されてしまう。
こうなっては最後の抵抗だとばかりに、エーリッヒは掴んでいた相手の肩を力一杯押し返すものの…。

「…ローザの奴には抱き着かせたくせに、俺にはキスの一つもさせてくれないのか?」
「………、は…?」

だが唐突に呟かれた台詞に、手を止め、エーリッヒは目を瞬かせた。

「その上、肩まで貸してベッドに運ぶわ、俺を放ってアイツの世話ばかりするわ」
「………」
「なのに、それら全てをキス一つでチャラにしてやるというのに、それすらアイツ以外とはできないって言うのか」

お前は俺よりローザの方が好きなのか!?
どうなんだ。
答えろ、エーリッヒ。

最後にそう詰め寄り、鼻先がくっつきそうなほど顔を寄せたシュミットに。
エーリッヒはしばし呆気に取られた表情を浮かべた後で、スミマセンでした、と吐息を零しながら答えた。

何が原因かは判らないが――恐らく、相手が今告げたすべてがそうなのだろうが――自分の行動がシュミットを不愉快にさせたらしいのは確かで。
たとえ。
ローザを自分に押し付けたのは貴方じゃないですか、とか
キスをしろと言ったのも貴方なら、それへ勝手に腹を立てたのも貴方でしょう、とかとか。
そんな諸々の不満があったとしても、それらを喉の奥に押し込んでしまうほど、シュミットの瞳は危険な色を浮かべていたのである。
とにかく目の前の――明らかに悪酔いをしている友人を落ち着かせるのが先決だと思い、そう告げたのだが…。

シュミットはエーリッヒの蒼い瞳を覗き込むと、その心の内を探るように目を眇めた。

「…あの、…?」
「本当に悪かったと思ってるのか?」
「…は、はい」

本当に本当だな?
と確認するように再度尋ねてきた相手に、エーリッヒは嫌な汗を掻きながらも、こくり、と頷いてみせる。
それへ途端、見惚れるような微笑を返したかと思うと―――…

「――…ん、…ッ!?」

シュミットはエーリッヒの唇に自分のソレを押し付けたのである。
驚きに目を見開き固まっていたエーリッヒだったが、不意に感じた下唇を吸われるような感覚に、びくりと肩を震わせる。
同時に、自分の意思とは関係なく零れた、ふぁ…ッという吐息に瞳を困惑げに揺らすと、その顔はみるみる真っ赤に染まっていく。

「本当に初めてなんだな、これぐらいで真っ赤になって」
「べ、別に関係ないでしょう…っ」
「関係あるさ」

クツクツと笑っていた表情を急に真摯なモノへと変えると、まるで壊れ物を扱うかのように、エーリッヒの唇をそっと指でなぞる。

「俺の初めてがお前なのに、お前の初めてが俺でないのは我慢できないからな」
「…ッ……そういう、ことは…好きな女(ヒト)に言って下さい」
「…だから言ってるだろう。好きな人に…」

お前に…
じっと見つめられ、息を吹き掛けるように耳元で囁かれたソレに、今までの行為ですでに混乱していたエーリッヒの頭をさらに混乱が襲う。

「そ、そうじゃなくて…!僕が言ってるのは、」
「判ったから、少し黙っていろ、エーリッヒ」
「で、でも……っんン…!」

なおも言い募ろうとするエーリッヒの唇を塞ぎ、固く閉ざされた柔肉を舌でなぞれば、再びビクリと肩が震える。
そうして唇が緩んだ隙をついて、中へと滑り込んできたモノが口内を蹂躙する頃には、押し返すために相手の肩を掴んでいた両手は、しがみつくように震えているだけだった。

「…ふ、……ぅん…」

角度を変えるたび鼻にかかったような、くぐもった声をあげるエーリッヒに気を良くしたのか、シュミットはさらに口付けを深いモノへと変えていく。
そうして相手の顎に添えていた指先を、きっちりと着込んだ服のボタンへとかけ―――…た瞬間。
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