*retsu-go*

□御礼ss
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【至近距離、君の呼吸】




微かに震えている睫毛に
心の中でクスリと笑い
ひとつ、触れるようなキスをすれば
口唇が離れた途端、詰めていた息を吐き出す姿に、今度は声に出して微笑う。

「息を止めるから、そうなるんだよ」
「…放っといて下さいっ」

真っ赤な顔で視線をそらしたエーリッヒを、だがその腕を掴むことで振り向かせると、シュミットはにっこりと微笑む。

「放っておけるわけないだろ。お前だけじゃなくて、俺達二人に関わってくる問題なんだから」

は…?
とエーリッヒが呟いたのと、二人の唇が再び重なったのは同時で。
驚きに見開かれたエーリッヒの瞳は、けれど何かを堪えるかのようにすぐさま閉じられる。

「…ん、ン……っは、」
「ほら、また止めてる」
「ちょ…待……、ッ…」

深くなっていく口づけについていけず、漸く解放された隙にと空気を吸い込むが、それを見計らったようにまたも口を塞がれてしまう。

そんな、長くて深いキスが終わったのは、それから5分ほど経ってからのことだった。

「……っは、…はぁ……しん、じられな…」
「信じられないのはコッチだ。これじゃあ練習にならないだろう?」
「練習なんて頼んでません…!なのに、」
「それなら、さっきも言っただろ?これは俺達二人の問題なんだと」
「だから、どうしてそれが…」
「決まっている。息継ぎが上手くできないままだと、今みたいなキスができないからな」

だから早くできるようになれよ、エーリッヒ
耳元でそう囁かれ、おまけとばかり噛まれた耳朶を真っ赤にさせると、エーリッヒはキュッと唇を引き結ぶ。
そうして引き止めるシュミットの手を振り払い、その場から立ち去ってしまう。
一人残されたシュミットは相手が去り際に呟いた台詞にクスリ笑うと、エーリッヒの後を追ってゆっくりと歩き出した。



――すぐには無理ですけど、努力は、しますから…――




*END*
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