らき☆すた【短編】1号館

□コトダマ
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日本には言霊というものがあるらしい。
人が発する言葉は力を持ち、人を喜ばせたり、悲しませたりする。
それがもし、好きな人からの言葉だったら…どれほどの力を持つのだろう。



「かがみが好き…」



好き、というたった二つの言葉の羅列にこんなにも心が踊る理由は、その言霊によるものなのだろうか。
叶うはずもないと思っていた想いが、届かないと思っていた手が、青空へと届いた日。
私達は長い時間をかけて一つに繋がった。





―――コトダマ―――





「…ったく」
右腕につけた時計の文字盤とにらめっこを繰り返しながら本日5回目の溜め息を漏らす。
その理由は至極簡潔。
友人であり、一週間前から恋人となった泉こなたのせいである。
集合時間はAM10:00。
ただ今の時間AM10:23。
そう、私は23分もの間こうして人の行き交う駅前で待惚けをくらっているのである。
『デートしよーよ、かがみん』
なんて誘ってきたのは、アッチからなのに。
そう心の中で文句をいいながらも、口元のニヤけは収まらない。
こなたに自分の気持ちを打ち明けて、こなたも私と同じ気持ちだったと知ってから私達は恋人になった。
お互い恋愛経験が0な上に、今まで友達だったという奇妙な距離感に戸惑いながら一週間が過ぎようとしている。
というか未だにこなたと両思いになったという実感がない。
だからこなたからデートしようよ、なんて言われた時は飛び上がるほど嬉しかった。
付き合ってからつかさやみゆきが気を使ってくれてか、帰りはこなたと二人きりで帰ることが多かったけど…変に意識しちゃって無言になることが度々あって。
恋人同士って、この気まずい時間をどうやって過ごしているんだろう…なんて峰岸にそれとなく聞いてみたら顔を真っ赤にして顔を逸らされた。
あー、なんとなく想像つくなぁ…
結局その後、日下部に色々詮索されて答えを聞きそびれたけど、つまりはそーゆー事なんだろう。
て、手とか…握ったり。
き、き、キス…とか?
だーーっ!!!
なんてこと考えてるんだ、私っ!



「あ、いたいた。かがみーっ!」
ブンブンと頭を振って邪念を追い払っていると、小走りで私に駆け寄るこなたが見えた。
ハァハァと肩で呼吸しながら上目遣いで私を見つめてくる。
「……っ」
か、か、可愛い…。
無意識に伸ばしていた左手に気付いて、バッとこなたから視線を逸してしまった。
何をしようとしてるんだ、私の左手!!
「かがみ?」
心配そうなこなたの声に答えるようにゆっくりとこなたの方へ顔を向けると、トレードマークであるアホ毛をピョンと立たせながらこなたが続ける。
「いやー、ごめんね。デート初日から遅刻しちゃって…待った?」
「待った」
春の息吹が感じられるような暖かい気温だけれど、23分も待たせられればいくらこなたといえ少し呆れてしまう。
でも、こなただから許してしまうというこの矛盾。
「ダメだなぁ、かがみん。そこは、俺も今着いたところさ。って言うのがデフォでしょ?」
「どんなデフォだ、ソレ」
そんないつものやりとりに緩む頬を手で隠しながら、こなたの方を向く。
ジャケットから覗く薄い水色のキャミソール、そこから見えるこなたの白い肌。
「……み…、かがみってばっ」
「…へっ?!あ、な、なに?」
その白い肌に見とれていたせいで反応が遅れた。
って、だから自重しろ。私。
むぅ、と少し拗ねたように頬を膨らますこなたが半端なく可愛い。
「ごめん、ちょっと考え事してて」
さすがにアンタの肌(特に胸らへん)に見とれてました、なんて言えるわけもないので弁解してみる。
「…考えごとって?」
「うっ、それは…その、あれよ、あれ」
やばっ、言い訳考えてなかった。
予想外のこなたからの質問に慌ててしまって頭が働かない。
うぅ、これじゃ嘘だってバレるじゃない。
「アレって何?」
私が聞きたいわよ。
なんて、理不尽な回答は心の中に止めておく。
「その…あの、て、…手繋ぎたいなぁ、って」
って、何を言ってるんだっ?!私の口は。
まぁ、そりゃあ手繋ぎたいけど…
だからってこんなタイミングで言うなんて我ながらアホすぎる。
恥かしすぎてこなたの顔を直視出来ないでいると、すっと私の左手に温いものが触れた。
え?と視線を下げると、私より少し小さな手が私の指を掴んでいた。
そんなことするのは一人しかいないはずなのに、確かめようとゆっくり顔を上げると頬を真っ赤に染めたこなたが視界に入った。
「あ、あの…こ、こなた?」
うまく喉から音が出なくて、声が裏返ってしまう。
「は、早く行こっ!!」
そう言うとグッと力を入れられて手を引っ張られる。
チラッと見えたこなたの顔はやっぱり真っ赤で、でもどこか嬉しそうで。
左手から伝わるこなたの温度が嬉しくて、幸せだった。
ほんの微かにこなたの指が動いたのを感じて、ゆっくりと握りかえすとチラッとこなたが私の方を見て
微笑んだ。






 
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