らき☆すた【短編】1号館

□私と貴女とクリスマス(前編)
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クリスマスかぁ…。



周りで流れているクリスマスソングに簡単に打ち消されるくらいの小さい声で呟くと、同時に白い息が
上空へとのぼっていった。
12月24日、世の中で言うクリスマスイヴに値する今日。
私は親友であり、ちょうど3ヶ月前から恋人関係まで発展した泉こなたの家へと足を急がせていた。



「私、かがみのこと……好き、になった…かも」



好きになったかも、なんてそんな曖昧な表現をしているくせに、耳まで真っ赤にしていたこなたを思い
出して、可愛いなぁなんて今更ながら思ってしまう。
こなたと出会って、こなたと一緒にいる時間はまるで魔法でもかけられたかのように一瞬に過ぎ去ってしまっていた。
まぁ、実際に魔法なんてこの現実に存在しないんだけどね。
「いやいや、かがみん。それは恋の魔法ってやつさ」



前にこのことをついうっかりこなたに話してしまった時、いつも私をからかうようなニヤニヤした笑顔を向けながら言っていたこなたの言葉を思い出す。



「恋の魔法ねぇ…」
まだ昼間だっていうのにチカチカと光る商店街のツリーを見上げて、先ほどの呟きより大きい声で呟いた。





―私と貴女とクリスマス―






「クリスマスイヴさ、私の家に…来ない?」
中間テストも終わり、あとはのんびり新年を迎えるだけ、という冬休みの初日。
こなたから言われた言葉は、つまりはクリスマスパーティーのお誘いだった。
「いいわねー、今年も4人で騒ぎながらクリスマス向かえるかー」
去年はこなたがイヴにバイトだったから、クリスマス当日に4人でクリスマスパーティーしたのよね。つかさの作ったケーキが激ウマだったことを私の舌がはっきり記憶している。
「いや、あの…えーと…」
「?」
受話器越しで口ごもってるこなた。
あーとか、うーとか呟いた後、小さく息を吸う音が聞こえたと思うと…
「かがみと2人きりで…」
私の耳がはっきりと聞き捉えたのは前半までだったけど…




過ごしたい。




だんだんと小さくなるこなたの声が、こう呟いたように聞こえたのは私の隠れた欲望のせいなのか。
ともかく、もう一度確認をとる必要がある。
「え、っと…つまり私とクリスマスを過ごしたい、と?」
うわっ、なにこの『上から目線』。言葉のあやよ、言葉のあや。
って、なんで言い訳してんのよ、私。
さっきのこなたの言葉でドキドキと心臓の鼓動がうるさい。
そういえば、イヴって付き合ってちょうど3ヵ月になる日よね。



「う、うん…」



小さく、だけどはっきりと聞こえたこなたの声に私の脳は一時停止してしまう。
えっと、それはアレよね。
恋人の年間行事で堂々の1位を飾っちゃう『クリスマスデートin彼女の家』シチュっスか、こなたさん。




思わず受話器を握る手を強めてしまっている自分に気付き、落ち着け理性、とを抑えていると、いつもより声をうわずらせて、こなたが「だめ、かな?」とか聞いてきたから私の理性は崩壊した。




数日前のやりとりを思い出しながら、歩みを進めていると、いつの間にか目的地であるこなたの家の前に着いていた。



「あ、かがみ。いらっしゃー」
何回か来たことのある泉家のインターホンを押すと、真っ赤な服を着たこなたが現われた。
相変わらず元気だな、アンタは。
「おっす、こなt…」
って、えぇぇぇ…
こなた?こなっ…えぇ?ちょ、何これ、夢?白昼夢?



私がここまで慌ているのには理由がある。
これが文章なことに作者ともに残念に思うこと極まりないのだけど…
私の目の前にいるこなたは、赤い帽子、胸元から膝上までのワンピース風の赤いミニコートを身にまとっていた。しかも胸の中心には鈴のおまけつき。
つまり、完璧な程のサンタコスチュームだ。
こなた自身が小さいせいか、そのコスチュームには981個くらいの花丸がつきそうな程似合っている。
頭の隅で38個目の花丸を書きながら目の前の世界平和にも役立つんじゃないかと思ってしまう私の恋人を凝視していると、
「うっ…かがみ、恥かしいよ」
と頬を赤らめるこなた。
いや、恥かしいってアンタ!!!
これ犯罪よ、禁固56年の刑よ。
たまらなくなってギュッとこなたを抱き締める。
「へ?か、かがみ…?」
「こなた…」
「え、かがっ…んんっ」



私の名前を呼ぶこなた唇を自分のそれで覆う。
ギュッと抱き締めているこなたの体が少し温かくなったのを感じた。
「ちょ、んぁ…か、が…」
呼吸をする為に唇を離す度に聞こえるこなたの甘い声が聞きたくて、でも唇を離したくなくて…
ただ目の前にいるこなたの唇を堪能する。
少し開いた柔らかい唇の間に自分の舌を入れるとヌルッとした感触に背筋がゾクゾクした。
「んはぁ、んくっ……が、み」
自分の舌でこなたの舌を捕らえるとこなたが切なそうに私の名前を呼ぶ。
こなたの舌を離し、歯茎をなぞるとピクピクと体を震わせるこなたが可愛くてついつい執拗に責めてしまう。
「んぁ…ちょ、あぅ…ま、って…」
自分自身では体を支えられなくなったのか、こなたが私に体重を預けながら静止の声をあげた。
名残惜しいけど、こなたからゆっくり唇を離すと、蒸気した頬とトロンとした目をしたこなたが私を見上げていた。
「か、がみ…激し、すぎ…」
ハァハァと肩で酸素を求めるこなたがいきなりキスした私を少し責めるように言った。
いや、これは完璧アンタに落ち度があるでしょ。
なんなのよ、そのかなりクるサンタコスは。



「ん?バイトのクリスマス用コスだよ」
「バイト?」
「うん。ほら私、コスプレ喫茶でバイトしてるし」



いや、それは百も承知だけど…
なんでソレを今アンタが着てるのよ?



「…かがみに見せたくて」
人差し指を唇に乗せて、挑戦するように右目を閉じるこなた。



「なんてね♪って、アレ?かがみ〜?」



颯爽と靴を脱いだ私は、少しうろたえているこなたをひょいとお姫様だっこして、勝手知ったるこなたの部屋へと向かう。
「ふぇ?か、かがみ…?」
ガチャと内側にある鍵をかけ、準備終了。



 
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