らき☆すた【短編】1号館

□Happy early afternoon
1ページ/1ページ

飲み物でも持ってくるわ、と私はこなたを部屋に待たせて階段を降りた。
その足が妙に浮き足なのは恥ずかしいから認めない。
あーもう、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
ただこなたが私の部屋にいるだけなのに。
いや、こなただからこそこんなにドキドキするんだけど。
自然に上がってしまう口角を誰に見られてるわけじゃないのに右手で隠す。
これが幸せボケというやつなのだろうか。
冷蔵庫のドアをあけると心地よい冷気が私の体を包み込んできた。
上気した頬には調度いいかもしれない。こんな顔で部屋に戻ったら確実にこなたにからかわれるだろうし。
飲み物は、オレンジジュースでいいか。あ、そういえばこの前買っておいたポッキーがあったっけとお菓子棚(ホントは食器棚だけど)に手を伸ばすと、

『お姉ちゃんへ。クッキー焼いておいたからこなちゃんと食べてね』

というつかさらしい可愛い字で書かれた紙を発見。
ナイス、つかさ。
話のネタにもなるな、と皿に盛られたクッキーとポッキーを手にもつ。
あ、ジュース。まぁ後からとりにくればいいか。
急いでってわけじゃないけど駆け足で階段を上がる。
あのドアの向こうにはこなたがいる。その事実がなにより嬉しくて、きっとドアを開ければ優しく私の名前を呼んでくれるんだろう。
あぁ、ダメだニヤけた顔が抑えられない。

「おっす、こなた」

でも早くこなたに会いたくて、ドアを開けながら愛しい愛しい恋人の名前を呼んだ。

「やあ、かがみん」

なによ、アンタだってこれ以上ないほどニヤけてるじゃない。
期待通り名前を呼んでくれたこなたに微笑みながら、下に置きっ放しのジュースのことを思い出した。

「ところで、こなた…」
「ねぇ、かがみん」

一緒にジュース取りに行かない?と言う言葉は私の名前を呼ぶこなたに遮られた。
てか顔が近い!!!
少し動けばキスできそうな距離にいるこなたの唇が少し開いていて、私を求めているようで。
グッと目を瞑ってこなたからの上目遣い&唇攻撃を回避しようとするけど、脳裏には鮮明にこなたの顔が映し出されていた。

「何?……言っとくけど、キスならしないわよ」

自分に言い聞かせる為半分、欲望を抑え込む為半分で呟いた言葉に、なんで分かったの?とこなたが意外な顔をする。

「なによ、首の後ろに腕を回して少し潤んだ目を細めながら、何かを求めるように唇を少し開いている恋人を見て、分からない人がいると思う?」

こなたの顔に指をつきつけながら言ってやる。
その顔禁止っ!!!ずっと見ていたいけど、禁止っ!!!

「むぅ… 好きな人とキスしたいって気持ち、かがみは受けとってくれないの?」
「ってか、その前に、会っていきなりかよ!!!全く……まずは、お菓子を置かせてよね」

結構重いんだから、なんて愚痴ってみるけどクッキーとポッキーしかないお盆は重いはずがない。
なんでコイツといるとこんなに調子狂うんだろう。
そんな私の心情を分かっているのかいないのか、ニヤニヤと笑うこなた。
というか、私だけ恥ずかしいのは狡い。
どうやって恥ずかしがらせてやるかと思考してると、ピンッと電球がついたように思い付いた。

「そしてこなた。私は、好きじゃないもの。』

「……えっ、私のこと…、嫌いなの?」

「誰が嫌いって言ったのよ」
アホ毛まで不安気にしなっているこなたが抱き締めてたくなる程可愛い。
嫌いなわけないじゃない。
アンタといるとドキドキするし、凄く落ち着くのに。
こなたもそう感じてくれているのだろうか。

「じゃあ、なんで…」

「好きじゃない………」

好きなんて言葉じゃ言い表せない程大きいこの思い。
こなたを恥ずかしがらせるつもりが、いつの間にか体温が上がっている自分の頬を隠すように下を向く。
そんな空気が伝染したのかこなたも慌てて私から視線を外した。

「じゃあ、なんなのさ」

拗ねたような、恥ずかしそうに呟くこなた。
抱き締めたい。
キスしたい。
一緒にいたい。

この感情は言葉に出来ないけど、言葉でなきゃ伝わらないこともあるわよね。

「…………大好き」
「…えっ?!」
「だ・か・ら!!好きじゃない、大好きなのよ」

あーもう、自分で言ったのに恥ずかしすぎる。
私の言った言葉が理解できないのか唖然とした表情で私を見つめるこなたの瞳がくすぐったくて、何かを呟こうとしたこなたの口を塞ぐ。

「……かがみ、私もんぅ…っ…ん」

それ以上言わなくても分かってる。
そう言うようにこなたの唇を奪う。
いきなりキスしたせいか、大きく見開いたこなたの瞳と目があった。

「………何、見てるのよ」
「かがみだって見てたじゃん」

唇を離しながら、抗議じみたことをいうと間髪を入れずこなたからの攻撃。
いや、まぁ、私も見てたけど。

「それは…」
「何さ」
「もうっ!!!……あんたが、かわいかったのよ!!悪い?!」
結局私はニヤニヤと笑うこの恋人には一生勝てないらしい。
私の答えに満足したのか、こなたが、私もそう思ってたよとギュウと私に抱きついてきた。
さっきキスした時よりも体が近い。
こなたから伝わる熱に私の理性がキャパシーオーバーだと警告している。

やばい。
止まらない。
ほぼ無意識にこなたへと顔を近付いて再びキスをした。
さっきよりも熱いこなたの唇が溶けそうな程気持ち良くて。
遠慮せずに舌を入れるとこなたが少し口を開けて私を迎えてくれた。
私より少し熱をもったこなたの舌を逃さないように自分のソレで絡めとる。
二人分の唾液が流れこんでくるせいでうまく息が出来ないのか、こなたの体が震える。
不規則で荒い吐息が漏れる度に私の胸に湧き上がって来る欲望が止められない。
もっとこなたが欲しい。
私のことだけ考えてほしい。
爪先立ちしている足がガクガクと震えているのが見えて、腰に回していた腕をこなたの首に絡める。
ギュッと強く瞑られたこなたの瞳が、上気した頬が、私の視界を覆いつくしてうまく頭が働かない。

「ぁっ…」

ガクッと膝から崩れたこなたが私の方に倒れ込んできた。
首を支えてたし、倒れ込んでくる予測はしてたからそのままこなたを支える。
まぁ私の部屋来る度、キスしてその度倒れ込んできたら嫌でも慣れるわよね。これっぽっちも嫌じゃないけど。乱れた呼吸をしているこなたの背中を、優しく撫でてあげると安心したように私の袖を握ってきた。

「……んぅ、ずるいよ、かがみん」
「あら、いつも強気なこなたが、珍しいわね。雨でも降るのかしら?」
「………ばか」

怒ったいるわけではないだろうけど、唇を尖らすこなた。
それすらも可愛いと感じてしまう私は恋人バカなのかしらね。
そんなことを考えているとこなたが小さい手で私の手を握ってきた。

「……ねぇ…、かがみ」
「何よ、キスなら、もうしないわよ?」
「……違うよ、かがみん。さっきの…」
「さっき? 何のこと?」

さっきのことってなんだろう。

「私、答えてなかったからさ…」

そういいながら何故か胸に手を当てるこなた。
握られている手に少し力がこめられて、ん?と首を傾げると、えっとねとこなたが続けた。

「私も、……だっ、……大好き、だよ」

いつもと同じ人数で、いつもと違う昼下がり。
この幸せな昼下がりは、永遠に続くわけじゃないけど。
その限りある時間をコイツと一緒に過ごしたいなと柄にもないことを願った。





 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ