らき☆すた【短編】1号館

□一文字の意味
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「突然ですが、問題です」
「ん…、ぅん?」
「50音で一番最初の文字は?」
あと少しで眠りの渦に落ちるというところで発せられたのは、横で寝転んでいる泉こなたの声。
瞼が重くて、意識していないと閉じてしまうこの状況で、なにを言ってるんだコイツは…
「なによ、それ」
勿論答えは分かっているけど、睡魔を妨げられた理由くらい聞いてみてもいいだろう。
まぁどうせまともな返答は返ってこないのだろうけど。
「あれ?答え、分からない?」
まともな返答どころか、ニヤニヤと口に手をあてて笑うこなた。
「……………あ」
「ピンポーン♪」
わざわざ挑発にのってやるのも癪だけど、それより猛烈に襲ってくる睡魔の方が断然優先事項なので素直に答えてやる。
さて、問題に答えたとこで私は寝るわよ。
「第二問っ!!これなんて読む?」
肩まで引き寄せた布団をグッと奪われ、どこから取り出したか分からない【井】と書かれた画用紙を私の顔の前におくこなた。
「……い」
わけが分からない。
まぁ普段から不可解な話題を平気で振ってくるし、何考えてるかなんて友達から恋人になった今も分からないのだけど。
「んじゃ、これは?!」
さっきの画用紙を裏返すと『si』という文字が現われた。
いや、『し』って言わせたいんだろうけどローマ字表記間違ってるし。
「はぁ…」
ローマ字なんて小学校で習うはずだろ、なんてつっこんでやろうかと思ったけど…
そう言えばコイツ、修学旅行の時撮ったプリクラでも私の名前間違ってたよな。
We love kagameって。
かがめって、なんだよ。
「チッチッチ…20秒経過っ!!」
良く分からない上に時間制限まであるらしい。
「…し?」
「アタックチャーンス」
いや、言うタイミング違うから。
「満足した?ほら、アンタもさっさと寝なさいよ」
暗闇の中、チラッと頭上にある目覚し時計を見ると、とっくに2時を過ぎていた。
布団に入ったのが11時だからなんだかんだで3時間以上も起きていることになる。
まぁ、色々した、からだけど…
「思い出して照れるかがみ萌え♪」
「るっさいっ!!」
てか私の心の中と会話するなっ!!
さっき散々放出したはずの熱がまた顔に集ってくる。
そんな顔を隠すようにプイッとこなたから顔を背けると、ギュッと左手を握られた。
「んなっ?!」
「第4問、今かがみに触れてるのは何?」
「……あ、アンタの手、でしょっ?!」
こなたの手から伝わる熱が私を浸食していく。
こんなことより恥かしいことをしてたくせに、なんでコイツに触られるだけでこんなに心臓がドキドキいうんだろう。
「かがみに触れてるのは、何?」
耳元で囁くこなたの吐息がくすぐったい。
「だからっ…アンタの」
目と鼻の近くにいたこなたの顔が近付いてきて、途中だった私の口を塞いだ。
「ん…」
角度を変えながらのキスを繰り返えされて、頭がボッーとなっていく。
「こな……ぁっ」
酸素が欲しくてこなたの名前を呼ぶとチュッと名残惜しそうな音を立ててこなたが唇を離した。
「今私が握ってるのは何?」
「………手」
目を細めて聞いてくるこなたに、乱れた息を整えながら答える。
きっと、欲しい答えはこれで合っているんだろう。
てか…もしかして、これって。
ニヤニヤと猫口で笑うこなたが少し恨めしいけど、問題の意図が分かった瞬間、かぁと上がった熱をどうしようも出来ない。

一問目の『あ』
ニ問目の『い』
三問目の『し』
四問目の『て』

と、きたら…
次に答えるべき答えはもう分かっているし。
私が答えることも、こなたには分かっているんだろう。
「こなた…」
「ん〜?」
「なんなのよ、これ」
「なんのことかなぁ〜」
コイツ…
明らかに私の言いたいこと、分かっているくせに。
どうやら本気で私に全部答えさせるつまりらしい。
「最終問題。私がかがみに言って欲しい一文字は?」
「…っ、んな、分かるわけないじゃないっ!!!」
いや、分かってるけど答えられるはずがない。
『愛してる』なんて、コイツが爆睡してたとしても言えるはずない言葉ランキング3に入る言葉だ。
「分かんないのぉ?かがみん♪」
はぁ〜とわざとらしい溜め息を吐きながら、こなたが挑戦的な目を私に向けた。
くそぉ、プライドが…
この安っぽいプライドがぁぁぁ。
「じゃあ、ヒントね」
そう言いながらこなたが大きくはない手で私を抱き締めた。
たった一文字なのに。
唇を丸めればすぐに出る一言なのに。
自分の意地っぱりな性格に嫌気がたつ。
「る」
「へ?」
「愛してるよ、かがみん」
さっきとは違う、優しい笑顔を向けるこなたが少し恥かしそうに私に告げた。

まったく…私はバカか。
こなただってこんなに真っ赤になりながらも私に愛の言葉を囁いてくれたのに。
「わ、私も…っ」
「かがみも?」
「あ、………いしてるわよっ!!!」
「いしてる?」
「ちがっ…」
せっかく恥かしさを堪えて言ったのに、ん〜?なんて聞き返すこなたが癪に触ったけど…
「だ、から…その、愛してる…わよ」
「ふーん♪」
コイツ、むかつく。
「そう言えばかがみ、眠いんじゃなかった?」
なにを今更とか、お前のせいだろ、なんて言いたいことはいっぱいあったけど…
惚れた弱みってこのことなのかしらね、なんて自嘲気味に笑ってみる。

「眠く…は、ない」
「じゃあ」
私の返事を始めから分かっていたように頷きながら、こなたが私の手を握った。
「もう少し問題出しあおっか♪」
嬉しそうに笑うこなたがなんだかとても愛しくて、もう少しくらいコイツに振り回されてもいいかな、なんて考えながらこなたの手を強く握り返した。




 

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