らき☆すた【短編】1号館

□チョコより甘いモノ
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他に誰もいない、二人だけの空間。その事実だけで、私は、素直に嬉しい。隣にいる青色の髪を、指で絡めるように撫でる。んぅ…、と、こなた。その手をゆっくり、柔らかい頬をつたって、唇の上を軽くなで、あごに持っていく。なるべく、音をたてないように。触れるようなキスをする。

『……ありがと♪』

その笑顔が、どんなものよりも、魅力的で、私を包みこんでいく。……でも、私はやっぱり聞きたかった。

『…………でも、こなた。』
『何? やっぱり、気になる?』
『…うん。』

そう言って、ドアから半分だけ顔を出して、周りに誰もいない事を確認する。

『大丈夫だよ♪ ……ほら、5分前のチャイム鳴ってる!!急がないと!!』

私達は急いで、4階の隅にある、空いてる教室を出る。誰も来ないから…って言われても、やっぱり、いろいろまずいような…

『……行かないの??』

そんな不安げな目で見ないでよ、少し潤んだ瞳が… あれ?

『…いや、行かないのって… なんか違うような、でも授業があるし…』
『……私だって、このままずっといたいけど、ここ、次授業あるよ。たぶん…』
『・・・早く言いなさいよ!!』
こなたの手を握って、階段を一気に落ちるように降りていく。後ろから、あ〜、って聞こえるけど、気にしない。教室まで全力疾走で走ってきたから。二人とも、息が荒い。教室の前にいたつかさは不思議そうに

『…どうしたの??二人とも、そんなに汗かいて…』
『ああ、これはね♪私とかがみんがさっきま……』
『わーーっと!!なに、つかさ、食後の運動よ!!』

そう言って、また走って教室に戻る。流石に疲れて足が重い。ちらっと振り返って見ると、こなたが手を振っている。何故か、体が軽くなると同時に、全てが、上手くいきそうな気さえした。



『チョコより甘いモノを』




それは、いつもの放課後。この頃雨が多く、じめじめして蒸し暑かったが、今日は久しぶりにからっとした晴々とした天気。少し歩くだけで、まだ冬用の制服が暑い。つかさは用事があるらしく、教室で先に行ってて〜と、それだけ言って、別れた。きっと職員室に消えるはず。多分… 宿題だろう。世界史やら数学やら生物やら……。昨日、部屋にこもって頑張ってたから、提出だけだろうけど。ちょっと心配…。本当は、つかさについて行きたかったけど、大丈夫って言ってたし… なにより、私を思い留めるのがもうひとつある。

『ねぇ♪一緒に帰ろ〜!!』

だから、私は久しぶりに、恋人のこなたと二人で帰っている。いや、やっぱり勝てないって。その帰り道、歩いていると、隣のこなたの左手がたまにぴくっと動くのが分かる。ふぅ… 分かったわよ。

『…………ほら、』
『えっ!!』
『もう!!…繋ぎたいんでしょ!!』
『………うん…。』

ゆっくりと、腕を伸ばすこなた。私も、指先で触る。伝わる体温よりも、自分が熱いのが分かる。私は、その瞬間が、嬉しかった。

『ねぇ、かがみん。あのさ…』
『…んにゃ、なにさ。』
『…!!………今、「んにゃ」って、言った〜♪♪』
『…う、うるさいっ!! ちょっと考え事してて気が緩んでたのよ!! んで、なっ、なんなのよ!』
『…照れるかがみ萌え♪ で、今日、さ。私の家で遊ばない??せっかく暇なんだし、たまには、二人で一緒に… ね?』

ね? って…、そっ、そんな…、かわいく言われたら、今、道路の真ん中で抱きしめたくなるじゃない、落ち着くのよ。私。

『……べっ、別に、あんたが遊びたいなら…、その…、一緒に遊んでも、いい…わよ。』
『照れて真っ赤なかがみ萌え♪』
『うっさいっ!!』

その潤んだ瞳に一発で仕留められた私は、こなたの部屋にいる。テーブルを挟んで、お互い向き合って座って、真ん中に置かれたおやつに手を伸ばす。たまに触れる手と手。少し顔を赤らめるこなたが、可愛い。かなり、可愛い。じっと見ていたら、気付いたらしく、恥ずかしいのか、抵抗したのか、小さな声で、こんな事を言ってきた。

『ポッキーゲーム……、しない??』

にやっと笑う、ように私には見えた。私だって、逃げる気なんてない。むしろやりた…、

『うわーーーっっ!!!』
『はぅあ!!どったの??かがみん!!驚かせないでよ、ってか、私変な日本語使ったじゃん。』
『いや、ごめん、なんでもない。』

落ち着け、うん。いけない… 妄想が先走った。ちらっと、横目でこなたを見る。返事を待っているのか、言った事実が、後から恥ずかしいのか。顔を赤くしている。

『も、もう!! 早くしてよ!! 言った私が恥ずかしいじゃん!!やるの!? やらないの!?』

明らかに、日本語がおかしい。ってか、立場が…

『やらないの??って、あんた。そりゃ… やり、たい…、けど…。』

ぱあっと、目を輝かせるこなた。そこまでわかりやすいと、私も、素直に嬉しい…

『じゃあ、かがみん。はい!! かがみはそっち。そして、私はこっちから…。……ん!!』

薄いピンクの小さな口の先に、ポッキーを緩くくわえたまま、目を細めるこなた。時々、小さく震えている唇で、緊張してるのが伝わってくる。もう、こなたから誘ったのに。私も緊張してきた…。このままずっと見ていたいけど、待たせる訳にもいかず、私は反対から、ゆっくり、歯で削るように、進んでいく。骨から響く振動が、より、緊張を高める。




 
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