らき☆すた【短編】1号館

□見上げる空はなぜ青い
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それから数日間、私はずっとこなたを避けてきた。
勉強したいから、とつかさに告げてこうして朝早く登校したり…
昼休みも日下部や峰岸と過ごすようにしていた。
休み時間たまたますれ違ったこなたにどんな顔をしていいのか分からず、顔を背けた。
愛しいのに、こんなに近くにいるのに…こなたが遠い。




「わ、私ね…」
記憶を辿っていた私を現実世界へと引き戻したのは私とは少し距離をとったところにいるこなただった。
「謝ろうと、思って…」
いつもより半音高い声。
いつもより萎れて見えるアホ毛。
いつもより緊張しているこなたの表情。
「私、かがみに嫌われるようなこと…しちゃった、かな」
違う。
謝らなきゃいけないのは…
嫌われなきゃいけないのは…
私だ。
自分勝手な欲望がこなたを傷付けている。
逸していた視線をこなたに向けると深いエメラルドグリーンの瞳が私を見据える。
なんでコイツはこんな綺麗な瞳をしているんだろう…
「わたし、は…」
―言うつもり?
こなたが好きだと、抱き締めたいと、ずっと一緒にいたいと…
「アンタのことが…」
ずっと我慢していたたった二文字の言葉が、私の全てを支配していく。
渇いた口内。
強く握り締めた左手。
痛いほどのこなたの視線。
ダメだ、言ってしまう…




「好き」




言って、しまった。
達成感というよりも虚脱感が私を襲う。
こなたの表情を見るのが怖くてギュッと目を瞑ると目の前に広がるのは闇…真っ暗に私を吸い込むような暗黒だけだった。
「……っ」
息を飲む音がして、ゆっくりを目を開けると、瞳を揺らすこなたが見えた。
こなたが私に対して友達以上の感情を持っているなんて毛頭思ってない。
だけど…
拒絶される程度の覚悟は持っていたつもりなのに…
こなたの瞳が私を責めているようで、背けた視線の向こうには少し明るくなってきた空が見えた。



…なんで空はこんなに青いんだろう。
思っても想っても届かない、この青空のような長い髪をもつこなたへの思い。
これからどうしよう、見上げた空に問い掛けてみるけど、答えてくれるはずもない。
「わたしはっ…」
視界の端に揺れる青い幻影。
すぅと息を吸い込んで次に続けられるだろう拒絶の言葉に備えた。
嫌われたくない。
自分から告白という裏切きをしておいてそんな理屈はないだろう、と自嘲気味に自分に話し掛ける。





「かがみが好き…っ」





「へ…?」
予想外の言葉に遅れた間の抜けた自分の声が、私達以外いないこの教室に響いた。



 
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