新選組長編

□序章 剣道部
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 太陽の照りつけるような陽射しの下、足を動かすたびスカートの裾がひらりと靡くのも気にせずに、勢いよく自転車をこぐ少女がひとり。
 
 それほど大きいとはいえない目は、しかし、きれいな二重まぶたに彩られ、えくぼと共に顔立ちをかわいらしく見せている。
 
 小柄な彼女の体格に似合わず、自転車の荷台にくくりつけられた大きな荷物は、剣道の防具で、前かごに立てかけられた竹刀袋はバランスよく彼女の手に支えられている。
 
 そう、今から向かう先は、日曜日にもかかわらず元気良く行われている、高校の部活動だ。

 

 校門を抜けると、徐々にスピードを落として道場にたどり着く。
 
 手際よく荷物を降ろし、見た目と裏腹に結構力があるらしい腕でそれらを抱え、道場の入り口の前に立った。
 
「こんにちは」

 かなり大きい声で挨拶をすると、道場に先に来ていたらしい部員たちが何かしら反応を返してくる。

 その中に、彼女は、すでに胴をつけて素振りをしていた、涼しい目元、すっきりとした顎、しなやかで無駄のなさそうな四肢を持つ、ひとりの先輩を見つけた。

「和泉先輩!」

 すかさず名を呼び、駆け寄ると、先輩は、またか、と嘆息し、早く着替えて来い、と促した。

 そう言われるのはいつものことなのだが、いささか寂しそうな視線を浴びせてから、更衣室へと小走りに向かうことにした。


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