新選組長編

□序章-4 背中
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 補欠の者は先にそそくさと帰ってしまったので、レギュラーに選ばれた5人だけが道場に残り、暫く緊張感は続く。

 女子主将である優美は、1・2年には殊更厳しく礼儀などの基本をしっかりするように言っておいた。強くてもきちんとできない人間は要らない、というのが優美の考えだ。また、レギュラーだからと言って気を抜いているとすぐに補欠の者と交代させるということを強く言い聞かせた。これは1・2年生に限ったことではないのだということが、優美の強い意志を映し出した瞳からもうかがえた。

 その後、漸く着替え終わってから、和泉達3年の先輩は、暗くなってきたから、と、下級生たちを送りがてら5人で一緒に帰ることに決めた。皆が帰るまでずっと片付けに勤しんでいた葉月も一緒に帰ることになった。下級生のマネージャーはすでに帰らせたようだ。

 このメンバーで一緒に帰るのは初めてである。しかし、普段は上下関係が割と厳しいにも拘らず、思いの外、自然体で話すことができた。

「雨降らなかったなぁ」

 和泉は、百合香が傘をくるくると回しながら楽しげに歩いているのを見ながら呟いた。休日の前の日以外、手入れのために防具を持って帰ることはせず、学校に置いたままなので、学校の鞄だけを持って、皆、身軽である。和泉と早紀子は自転車通学なので、徒歩の者に合わせて自転車を押しながら歩いているのだが。

「荷物持とうか?」

 和泉と早紀子は自分の自転車の前かごの空きスペースを示しながら言った。葉月と優美は同級生で気心も知れているのですぐに「よろしく!」と言って乗せてきた。それを横目に、先輩に持ってもらうなんて、と戸惑っている姫華と百合香には、葉月が「はいはい、遠慮しない!」と言って無理やり荷物を奪って2人の前かごに乗せた。


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