新選組長編

□第1章 出会い
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―四条大宮にて。

 まばゆい光を見た瞬間、頭痛が襲ってきた。

 なんでこんな大事な時に、と思った。

 妙に頭が重く、瞼を押し上げるのも面倒に思い、そのまま目を閉じた。

 頭の重さとは裏腹に、体は軽くなっている気がする。

 何だか全てがどうでもよくなり、意識を手放しかけた瞬間、耳元で声がした。

 ひどく懐かしい気はするが、思い出せない。

「先輩!和泉先輩!」

 一瞬、誰の事か分からなかったが、なんとなくそれは自分に呼び掛けているものであるように思えてきた。自分は寝ぼけているのだろうか。

「和泉先輩!」

 更に呼ばれ、ようやっと目をあけることにした。

 目の前には見覚えのある顔があったが、どうも頭痛で頭の回転が鈍くなっており、思い出す事が出来なかった。

「誰だてめぇ」

 不躾な気はしたが、思い出せないのでは仕方無い。

 しかし、目の前の少女の目が潤んでいるのを見ると胸に罪悪感が込み上げてくる。

 そして急に記憶がよみがえり、思い切り体を起こした。

 「おい、ちょっと待て。お前みたいな奴がなぜこんな場所にいるんだ」

「そんなこと知りません。先輩こそ何でこんな所で倒れていたのですか。それより、ずっと探していたんですよ、和泉先輩」

 ずっと自分を探していた理由は全く分からなかったが、何だか目の前の少女を無碍に扱ってはならないと脳内の何かが告げていたものだから、とりあえず礼を言うことにした。

「良く分からんが、ありがとな」

 そう言っただけで、また少女の目から涙があふれ出してきた。

 こいつは今まで自分が接してきた女とは全く別物な気がした。

 しかし、そんな事に感心している場合ではない。大切な事を言い忘れていた。

「お前は何か勘違いしているようだが、俺は土方だ。和泉ってのは誰の事だ。聞いたことはある気がするんだがな」

 その一言で、ついに少女は声をあげて泣き始めてしまった。

「先輩、記憶、ないんですか?」

 こんな不審な女、普段の自分ならすぐに連行するのだが、今回はお手上げだ。とりあえず屯所に連れて帰る事にしよう。

「そういえば、お前の名は?」

「剣崎百合香です」

 少女はぼそっと一言呟いたきり、黙ってしまった。

 今回は本当に、お手上げだ。
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