新選組長編
□第1章-2 多重人格
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屯所に戻ったのは良いが、こんな拾い物を見られては困る。
どうしたものかと思案していた時、正面から大声が響いた。
「土方さん!本物だー!」
本物だ、とはなんという言い草。そう思ったのも束の間、俺は、総司の隣にいる人物を見て、固まってしまった。
「こちら偽物の土方さんですよー」
こちらの気も知らず、歌うような声音で言いやがる。
総司の隣にいる人物は、顔や髪形、背格好まで俺そっくりだった。
だが、道着の袖から出ている手や、首の太さなんかは俺の方がでかかった。
要するに、俺のガキの頃にそっくりだったのだ。
しかし、驚いたのは俺だけではなかったようだ。連れてきた剣崎とかいう少女が、大声を上げ、そいつに走り寄った。
「和泉先輩!」
意識がもうろうとしていた時に言われたあの名前はこいつのものだったのか、と知る。
それにしても、いくら顔が俺に似ているとはいえ、なんとなくなよなよしているあいつと俺を見間違うものなのだろうか。
そんな疑問は、総司の一言で吹き飛んだ。
「土方さん、話は後で!今は中に入らないと誰かに見られてしまいますよ」
その言葉で、俺達は、今日は誰も近寄らないであろう俺の使っている部屋へと入ることにしたのだった。