はじまり
□ちぢんで…る
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緑の風が語りかける。
『ミケ…。どうかあの子を救って…』
風かと思われたそれは、徐々に形を成し1人の女性へと姿をかえた。
星の海で届かない祈りを懸命に捧げる。
それは一種の謝罪にも思われた。
…――私のわがままに付き合ってください――…
「んにゃ?」
何か聞こえたような…。
そう思い誰もいないハズの後ろを振り返る。
「ん〜??」
やはり誰もいない。
陽が傾き、長くなった自分の影があるだけだ。
《空耳?…はッ!?まさか死んだおばーちゃん!?ダメだよ、私はまだそっちには……》
「って、そんなわけないか☆」
そう言って特に気にした様子も無くツッコミひとつ、帰路に戻る。
「ん〜…ふふーん♪」
先ほどから足取りが軽い。
ミケは友達と別れた後、ひとり浮かれ気分で家に帰っているところであった。
「♪〜えっへへ〜」
今日嬉しい事があった。
その事を思いだすと道路の真ん中でも自然にスキップになってしまう。
「にゃは〜矢口君に告白されちゃった♪奇跡のようだっ」
《しっかし最近何だかいい事続きだなぁ〜…。
テストで良い点とりまくるし、
部活でも記録がいい感じだし、
何より!!今日のお弁当おいしかったし…♪》
一番嬉しかった出来事がお弁当なのはどうかと思うが。
《よぅし、明日のお弁当にもあれいれてもらお!》
緩みっぱなしのほほを押さえながらそう思っていると、急に視界が黄緑一色に染まった。
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