はじまり
□私の人権無視!?
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『…そこで私は、恋をすると世界が輝く事に気づきました。小さなことでも幸せに繋がる、とても懐かしい感情です。
そしてこれを生かして、あの孤独な少年を救えないかと思い……矢口君とは泣く泣く離れミケとともにこちらへ戻ってきたのです…――――』
そこまで話してマーテルは目を瞑った。
ミケの体が変化するときのように、淡い光に包まれたかと思うと、黄緑の毛の小さな猫に変身していた。
「ガチャピン!!」
『にゃあ』
そう、ひと鳴きして再び人型へと変化する。
椅子に腰掛けたミケの前で両膝をついた。
「やっぱりマーテル様がガチャピンだったんだね。ってことは私の家に来た人も?」
『はい、騙すような形になってしまい申し訳ありません』
白くて儚げな手が、ミケの小さな手を包み込む。
『…自分勝手な話だと思いますがお願いします。
見ず知らずの猫を自分の命も顧みず助けてくださるあなただからこそ………あの子を……ミトスも救ってあげて欲しいのです』
「マーテル…様……」
《そっか、最初にこの世界に来たときにトラックの前に飛び出しちゃったんだっけ…》
妙な懐かしさを覚え、頬をポリポリとかく。
「私に……そんな大それた事出来んのかな??」
その問いかけにマーテルは一瞬だけ驚いた表情をみせ、すぐにやわらかく微笑んだ。
『…ミケは大きな心の持ち主です。
だから周りの人も、矢口君も……そして私も惹きよせられるのです』
そう言うとマーテルはミケの頬に手をそえた。
夜空のように澄んだ瞳。マーテルはあの日から、ずっとこの少女を探しもとめていたのだ。
『覚えていませんか?ミケ…。昔あなたが言った言葉が、私にとって大きな希望になっていたんですよ』
「へ??昔って??」
きょとんとする少女に女神は小さく苦笑した。
『…まだ、内緒です』
「なにゆえー」
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