はじまり
□あら白菜安い。
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「…ん…、」
アラームが鳴る前に意識が覚醒した。
見慣れたはずの天井があることに違和感を感じながら、体を起こす。
《…そっか。私、かえってきたんだっけ》
昨日の夜から開けっ放しだった窓から澄んだ風が部屋にはいっていた。
机にたたんで置いておいた桃色の服と赤いリボンが少しだけたなびいた。
「………。
…よし、リビングいこ」
notice:シロがいなくなった。
「なんでー!!?」
起き抜けに母親に伝えられた事実に盛大に叫んでしまった。
「修行とか言ってお庭で遊んでいたんだけどねぇ…??はい、ゼロス君。ブラックでよかった??」
「ありがとうございます、マダム」
「和むなぁぁぁ!!」
さほど心配した様子もなくゼロスにコーヒーを渡す母親。その神経の図太さは昨日証明されてはいたが。
「もしかして誘拐!?身代金は…犯人は…まさかルパンっ!?」
ミケ、一足先に頭だけトリップ。
机の周りをウロウロするミケをゼロスが苦笑しながら椅子に座らせる。
「まーまー、誘拐なんて日常茶飯事っしょ」
「貴族様と一緒にしないでくれる!?」
「ミケちゃん、朝から元気だな〜」
「これを元気で済ませるな!!…って、なんかゼロス君、今日はご機嫌だね??」
そう訊ねるとゼロスは少し驚いた表情をしたのち、
「夢見がよかった」
と優しく顔を綻ばせた。
「ふーん?」
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